生体で発生する活性酸素の上流域で産生されるスーパーオキサイドアニオンの産生状況を非侵襲的に分析できるプローブの開発を実施している。本プローブはスーパーオキシドアニオンとの化学反応により近赤外光を発し、その光の量を測定することによりスーパーオキサイドアニオンの産生状況を解析するのが原理である。スーパーオキサイドアニオンは、短寿命(水溶液中では1秒程度)であるため、生体からスーパーオキサイドアニオンを取り出したり、生体組織を取り出すことによってスーパーオキサイドアニオンを検出することは不可能である。そのため生体を非侵襲的に生きた状態でスーパーオキサイドアニオンを検出するこ とが必要である。 本研究では、開発したプローブを用い、ラットにおける耳たぶ皮膚炎、膝関節炎、Fe-ニトリロ酢酸錯体投与による急性腎臓障害などにおけるスーパーオキサイドアニオンのin vivo挙動を可視化イメージングすることに成功した。 これらのイメージング分析においては、プローブを尾静脈投与(250 nmol/kg体重)し、EMCCDカメラシステムを用いて患部のプローブ由来の光を検出し、光強度を解析ソフトを用いて数値化し、時間・部位におけるスーパーオキサイドアニオンのリアルタイムでの存在を評価した。本プローブは、尾静脈投与後、全身を循環し速やかに腎・肝排泄する性質を有することが判明し、臓器の中でも特に投与5分後の腎臓および肝臓内濃度が高い状態で安定し、生きた状態の腎・肝臓内のスーパーオキサイドアニオン挙動のin vivo解析に有用であることが示された。
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