研究課題
タンパク質はDNAのように増幅することができない。そのため、1細胞プロテオミクスを実現するには、細胞から回収されたタンパク質をいかに損失することなく質量分析計に到達させるかがポイントとなる。申請者は、油中に形成した微少な液滴中でタンパク質の前処理をすることで、プラスチック容器との接面積が縮小し回収率が劇的に改善することを見出している。また、液滴にビーズを添加することで回収率が上昇することも見出している。本申請課題では、この油中液滴法を改良することで1細胞プロテオミクスの達成を目指した。2020年度までは、油中液滴法の最適化を行ってきた。2021年度は最適化された油中液滴法を用いて1細胞プロテオミクスを行った。細胞はセルソーターで液滴に導入して油中液滴法を行った。比較対象群として、溶液消化法で前処理された試料を用いた。ペプチドは前年度までに最適化された条件でTMT標識した。両群のサンプルを混合して分析した。油中液滴法で得られたペプチドの量は、溶液消化法で得られたペプチドの量よりも約10倍に増加した。1細胞から同定されたタンパク質は約800種類だったが、定量されたタンパク質の数は約400種類に減った。これは溶液消化法で得られるTMTレポーターイオンのシグナル・ノイズ比 (S/N)が低いことが原因だった。両群を正しく比較定量するために、TMTレポーターイオンの平均S/N比が10未満のスペクトルは定量対象から除外している。油中液滴法由来のサンプルのS/Nが高くても、溶液消化法由来のサンプルが平均S/Nを低下させていた。油中液滴法のみを混合して分析することで、同定数と定量数は同等になると考えられた。また、油中液滴法用の基材については、PDMSと煤を用いることで、酢酸エチル中でも安定して超撥水性を示す基材を構築できた。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (10件) (うち国際共著 2件、 査読あり 8件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 2件)
ELECTROPHORESIS
巻: - ページ: -
10.1002/elps.202200002
Journal of Pharmaceutical Sciences
10.1016/j.xphs.2022.02.006
Journal of the Mass Spectrometry Society of Japan
巻: 70 ページ: 72~73
10.5702/massspec.s22-13
bioRxiv
10.1101/2021.12.13.472378
Pharmaceutical Research
10.1007/s11095-021-03131-8
Biological and Pharmaceutical Bulletin
巻: 44 ページ: 1551~1556
10.1248/bpb.b21-00463
The FEBS Journal
巻: 289 ページ: 231~245
10.1111/febs.16123
Journal of Cerebral Blood Flow & Metabolism
巻: 41 ページ: 1026~1038
10.1177/0271678X20941449
Blood Cancer Discovery
巻: 2 ページ: 370~387
10.1158/2643-3230.bcd-20-0108
Biochemical and Biophysical Research Communications
巻: 557 ページ: 273~279
10.1016/j.bbrc.2021.03.173