研究課題/領域番号 |
19K05545
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
北村 裕介 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (80433019)
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研究分担者 |
勝田 陽介 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 助教 (50632460)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核酸 / アプタマー / 分子協働性 / バイオセンサー / PD-L1 / がん免疫療法 |
研究実績の概要 |
腫瘍細胞の細胞膜上に高発現している膜タンパク質であるPD-L1を標的とした。まず、1.0E+12の多様性を有する初期DNAライブラリーの中からPD-L1に結合するものだけを通常のSELEX法にて選択した(予備選択)。予備選択を終えたライブラリーをPCRにより増幅する際、5’末端にアントラセンを修飾したフォワードプライマーを用いることで、アントラセン修飾ライブラリー(Ant-Lib)を得た。このライブラリーを用いてProximity SELEXを行った。まず、プロテインA被覆磁気ビーズに、PD-L1の細胞外領域とIgGのFc領域のキメラタンパクを固定化した。これと3’末端にアントラセンを修飾した既知の抗PD-L1アプタマー(プライマリーアプタマー)をインキュベートした。そこにAnt-Libを加えてさらにインキュベートした後、366 nmのLED光を1分間照射した。抗PD-L1アプタマーに相補的なビオチン修飾DNAを加えアニーリングし、ストレプトアビジンカラムによって捕集・精製した。5’末端にアントラセンを修飾したフォワードプライマーを用い、PCRにより増幅し、これを次のラウンドのライブラリーとした。なお、各ラウンドの近接位選択の前に、磁気ビーズやFc に非特異的に結合するライブラリーを除去した(Counter SELEX)。この操作を5ラウンド目まで繰り返し、最終的に得らえたライブラリーをベクターに組み込み、大腸菌にトランスフェクションした。得られたコロニーから回収したベクターの配列をサンガーシーケンシング法により解読した。その結果、同一の配列は確認されず、現状、選択の過程にあることがわかった。今後は、さらに淘汰圧を強めながら選択を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各DNAコンジュゲートの合成を終え、タンパク上での光ライゲーション産物、つまり近接結合したアプタマー対となるものが得られていると想定されるデータを得られている。また、セレクションを5ラウンド目まで進めたことで、ライブラリーの近接位選択が順調に進行していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、結合親和性や結合位置に関与する淘汰圧を強めながら、この操作を繰り返すことでAnt-PD-L1の近傍位に強く結合しうるアプタマーが取得されると期待される。その後、SPRなどを用い、得られたセカンダリーアプタマーのPD-L1に対する結合定数を求める。連結型バイナリー化により、アプタマーの結合親和性が連結前より向上したことを確認する。協同的認識型バイナリー化においては、両者の近接末端同士にそれぞれFRETドナーとアクセプター(FITC、TAMRAなど)を修飾して用いる。大過剰のマトリックス(BSA、血清培地など)共存下、レシオ分析によってバイナリー検出の高選択性を実証する。機能導入型バイナリー化のモデルとして、アントラセン修飾バイナリーアプタマーの結合親和性が光照射により可逆的に制御できることを実証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染防止対応に伴う、若干の研究の遅れによるもの
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