研究課題/領域番号 |
19K05546
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
澤田 剛 鹿児島大学, 研究推進機構・研究支援センター, 准教授 (90240902)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 円偏光 / センサー / フォトクロミズム / ジヒドロピレン / トリ-s-トリアジン骨格 |
研究実績の概要 |
2019年度は、1. 非対称 PZ-DHPの合成と円偏光応答性の検討、および、2. 光触媒機能を有するTsTA系有機半導体薄膜の合成を実施した。 1. 非対称 PZ-DHPの合成と円偏光応答性の検討:2種類の新フォトクロミック化合物を合成し、その1つの光学分割をおこなった。新しくジベンゾキノキサリン(DBQ)を縮環したDBQ-DHPを合成し、DBQ-DHPが、570nm, 443nm, 336nmに吸収極大を有すること、また435nm以上の可視光を照射することにより、 DHP部位の内部位が開環し、吸収波長が大きく変化することを見出した(最大吸収波長 255nm 379nm)。しかし、キラルカラム(YMC社、Amylose-SA)によるDBQ-DHPの光学分割ができなかった。そのため、新しくジメチルピラジン(DMPZ)を祝環したDMPZ-DHPを合成し、その光学分割を試みた結果、キラルカラムによる分割が可能であることを見出し、光学分割したDMPZ-DHPが、お互いに反転したCDスペクトルを示すことから、新しい円偏光フォトクロミック材料として有効であることが判明した。 2. 光触媒機能を有するTsTA系有機半導体薄膜の合成:TsTA系の薄膜合成において、その基本骨格となるメレムと関連化合物類の合成を行い、昇華による精製を行なった。さらにその固体NMR、反射スペクトルなどを測定し、バンドギャップをTaucプロットにより分析した。光触媒としての可能性について検討した。 これらの結果は、4回の国内学会(2回は招待講演、1回は学会が開催されなかったため、要旨集の発表のみ)にて報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究目的の1つである、非対称 PZ-DHPの合成と円偏光応答性の検討において、不斉フォトクロミック分子であるDBQ-DHPを合成したが、光学分割ができなかったため、予定より進展がやや遅れていると評価した。その後、構造の異なる不斉フォトクロミック分子であるDMPZ-DHPを合成し、光学分割が可能となったので、次年度には進捗状況を改善できると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 非対称フォトクロミック材料の合成と円偏光応答性の検討:2019年度は、2種類の不斉フォトクロミック分子を合成し、その1種を光学分割を行なったので、2020年度以降は、光学分割を行なったDMPZ-DHPの円偏光応答性を評価する。また構造の異なる不斉フォトクロミック分子を合成し、購入したセミ分取キラルカラム(YMC・Amylose-SA)による光学分割と円偏光応答性を検討する。光学分割した PZ-DHP 溶液に、円偏光フィルターを透過 した可視光を照射して、偏光の向きの違いによる光応答性の差を、紫外可視分光光度計(UV-Vis)、CDスペクトルで評価する。 2. 光触媒機能を有するTsTA系有機半導体薄膜の合成:2019年度は、TsTA類である、メレムやその類縁化合物を合成しその物性を評価したので、2020年度以降は、これらを基本構造とする有機半導体薄膜を合成する。 得られた薄膜に関しては、X 線光電子分析装 置(XPS)や電子線プローブ マイクロアナライザ (EPMA)、ケルビンプローブフォース顕微鏡(KFM)などを用いて、表面構造や電気的特性を分析し、半導体特性を評価すると ともに、キセノンランプを光源として光触媒機能も検討する。 3. 円偏光センシング薄膜の形成と円偏光応答作用の評価:2020年度以降は、不斉 PZ-DHP 類をTsTA骨格を有する有機半導体 薄膜の表面への添加を試みる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請した金額より交付金額が減額され、予定したCD検出器が購入できなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。また、購入したセミ分取キラルカラム一式に関して、ガードカラムを除いて本体のみを購入したため、予定した595,620円から、478,500円に減額したことも原因である。旅費の減額が生じた理由としては、日本化学会第100春季年会が中止されたこともその一端を担っている。 使用計画としては、2019年度に遅れ気味であった円偏光材料の合成に必要な各種消耗品の購入、基盤材料の購入、また2020年度後半に分析機器の利用や、有機π電子シンポジウム等の学会発表の旅費として利用する予定である。
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