研究実績の概要 |
2020年度は、1. 非対称PZ-DHPの分子設計、光学分割法の改良の改良、2. 円偏光応答性の評価を実施した。 1. 非対称ピラジノジヒドロピレン(PZ-DHP)の分子設計、光学分割法の改良: 2019年度に2種類の新フォトクロミック化合物、ジベンゾキノキサリン (DBQ)を縮環したDBQ-DHP、ジメチルピラジン(DMPZ)を祝環したDMPZ-DHPの2種類のDHPを合成したが、キラルカラムによる光学分割が不十分であったが、より大きな置換基を有する非対称なフェニルメチルピラジン環を縮環したPhMPZ-DHPを合成し、光学異性体の分離能を検討した。さらにキラルカラムをダイセル製CHIRALPAC IAに変更することで、分離能の向上を得るとともに、DBQ-DHPの光学分離を達成した。光学分割したDBQ-DHP, DMPZ-DHP, PhMPZ-DHPに関して、CDスペクトルを測定した。その結果、DBQ-DHPは、595nm, 436nm, 413nm, 325nm, 266nm にCD極大を有しており、 DMPZ-DHPは、495nm, 401nm, 326nm, 259nmに、PhMPZ-DHPは、539nm, 508nm, 409nm, 384nm, 324nm, 270nmにCD極大を有していることが判明した。 2. 円偏光応答性の評価: PZ-DHP類の光学異性体の光応答性を検討した結果、それぞれ450nm以上の光照射によりDHPユニットの中心の結合が開裂し、メタシクロファンジエン構造(MCD)に異性化することを見出した。この時、CDスペクトルもUV-Visスペクトル同様に光異性化挙動により変化し、254nmの波長の紫外光照射により元に戻ることを確認した。さらに5-10回の光異性化サイクルを経てもラセミ化は進行せず、CD活性を維持することを見出した。また、それぞれの光学異性体はCDスペクトル活性を示ため、右円偏光と左円偏光に対する吸収の差を示すことが判明した。これらの結果は、2回の国内学会にて報告した。
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