研究実績の概要 |
円偏光を高感度でセンシングする技術の開発に関して、2019年度から2021年度に、1. 非対称 PZ-DHPの合成と円偏光応答性の検討」に関して検討を行った。2019年度に、ジベンゾキノキサリンを縮環したジヒドロピレン(DBQ-DHP)と、ジメチルピラジンを縮環したDMPZ-DHPを合成し、2020年度にメチルフェニルピラジンを縮環したMPhPZ-DHPを合成した。2019年度から2020年度まで光異性化挙動、光学分割を検討した。可視光照射により光異性化したメタシクロファンジエン(PZ-MCPD)類をキラルHPLCにより光学分割した。UV-Vis、CDから光学純度を求め、CDとDFT計算の比較により絶対構造を推定し、異性化挙動によりラセミ化が進行しないことを確認した。 また、2019年度に2. 光触媒機能を有する TsTA 系有機半導体薄膜の合成について研究し、その基本骨格となるメレム類の合成、昇華による精製を行なった。さらに反射スぺクトルの測定からTaucプロットによりバンドギャップを計算し、TsTA 系薄膜の光触媒としての可能性を検討した。 2021年度に、3.円偏光センシング薄膜の形成と円偏光応答作用の評価について検討した。不斉PZ-DHP類が左右円偏光に対して示すモル円二色性とモル吸光係数の比(Δε/ε)はKuhnの異方性因子(g)と定義されるが、PZ-DHP類のg因子は0.006ー0.012 だった。不斉PZ-DHP類の液膜に波長550nmの左右円偏光を照射した結果、[S]-, [R]-PZ-DHP類の光異性化反応の速度差から、円偏光センシング薄膜としての可能性を見出した。これらの結果は、2019年度から2021年度までに7件の国内学会(2回は招待講演)、1冊の図書として報告し、2022年度前半に1件の国際学会、1件の国内学会、1報の学術論文として発表予定である。
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