研究課題/領域番号 |
19K05549
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研究機関 | 芝浦工業大学 |
研究代表者 |
正留 隆 芝浦工業大学, 工学部, 教授 (30190341)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マイクロ流路ペーパー分析デバイス / 電位差分析法 / イオン選択性電極 / 予備濃縮 |
研究実績の概要 |
本研究では、化学的に改質された紙相に、環境汚染物質であるイオン性界面活性剤(IS)を予備濃縮した後、検出部である紙デバイスに組み込まれたイオン選択性電極(ISE) に溶出させ、生じた電位差により定量する紙ベースの新規microfluidic paper-based analytical devices (μPAD) を開発することを最終目的としている。本年度は予備濃縮システムを集積した新規μPAD の領域C において、可塑剤を2-ニトロフェニルオクチルエーテルとし、アニオン交換体の種類を変化させたISE 感応膜を作製し、そのIS に対する電位応答感度が最も高い感応膜組成をバッチ法により検討した。用いたアニオン交換体は、塩化トリデシルメチルアンモニウム(TDMA)、臭化テトラデシルメチルアンモニウム(TDAB)、臭化メチルトリオクタデシルアンモニウム(MTOA)、臭化テトラヘキサデシルアンモニウム(THAB)である。TDMAは4種類のなかで鎖長、炭素数ともに最小である。そのため、アニオン交換体としてTDMAを用いるISの電位勾配が最も小さく、測定の再現性も十分ではなかったものと推定される。TDABはTDMAと比較して、鎖長の長さは同じであるが炭素数が多いため、アニオン交換体としてTDABを用いるISEのISに対する電位勾配は、アニオン交換体としてTDMAを用いるISEのISの電位勾配より優れているものと考えられる。また、THABの炭素数は、MTOAのそれよりも多いため、アニオン交換体としてTHABを用いるISEのISに対する電位勾配は、アニオン交換体としてMTOA を用いるISEのISに対する電位勾配よりも高いものと考えられる。以上のことから、4種類のアニオン交換体の中でTHABを用いるISE 感応膜がISに対して最もよい電位応答を示すことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定では、領域B の疎水性リング中のアニオン交換体の種類とその濃度のIS の濃縮倍率に及ぼす影響をバッチ法により検討し、予備濃縮システムを集積した新規μPAD を試作することであった。しかしながら、従来報告されているμPADの作製のためのノウハウがないため、アニオン交換体の種類とその濃度のIS の濃縮倍率に及ぼす影響をバッチ法により検討することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
文献検索の情報と、他のμPADの研究者からの情報も参考にしながら、まず、従来報告されているμPADの作製を再現性良く行うことを最初の目的とする。これがうまくいけば、領域B の疎水性リング中のアニオン交換体の種類とその濃度のIS の濃縮倍率に及ぼす影響をバッチ法により検討し、新規μPAD を試作することができると考えている。次に、以下の(1)と(2)の検討をおこなうよていである。(1) μPAD によるIS の濃縮倍率に及ぼす紙材料の種類、試料溶液の体積、予備濃縮時間、溶離液として作用するNaCl 濃度の影響を検討する。(2) 新規μPAD と従来のμPAD によるIS の定量感度の比較を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の予定では、領域B の疎水性リング中のアニオン交換体の種類とその濃度のIS の濃縮倍率に及ぼす影響をバッチ法により検討し、予備濃縮システムを集積した新規μPAD を試作することであった。しかしながら、従来報告されているμPADの作製のためのノウハウがないため、アニオン交換体の種類とその濃度のIS の濃縮倍率に及ぼす影響をバッチ法により検討することができなかった。そこで、文献検索の情報と、他のμPADの研究者からの情報も参考にしながら、まず、従来報告されているμPADの作製を再現性良く行うことを次年度に再検討することが肝要と考え、そのための予算を次年度に残しておくことにした。
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