研究実績の概要 |
本研究では,紙相に測定対象物質を予備濃縮した後, μPAD検出部のオプトードに溶出させ, 生じたオプトードの吸光度変化により定量する新規μPADを開発することを目的としている. 測定対象物質は陽イオン性界面活性剤であるゼフィラミン(Zephi)とした. オプトード膜液は著者らの方法{M. A. Ashagre, T. Masadome, Anal. Sci., 34, 195-199 (2018)}を用いて作製した. 作製したオプトード膜溶液を油性ペンで描いたろ紙(ADVANTEC 2)上の直径1cmの円内部に1滴滴下し, 5分間放置してろ紙上にオプトードを作製した. ろ紙へのZephiの予備濃縮の検討は以下のようにして行った. ろ紙を0.5 wt%水酸化ナトリウム含有アルギン酸ナトリウム(SA/NaOH)溶液に10分間浸すことで、ろ紙にSAを固定化した. このろ紙をZephi溶液10mLに浸しZephiを濾紙上に予備濃縮し,このろ紙3枚をオプトード膜に重ね,pH 4.0 酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液10滴を滴下し2時間放置し,ろ紙上に予備濃縮されたZephiをオプトード膜に溶出させた.オプトード膜のRGB値とL*a*b*値およびΔEを算出しZephiに対する検量線を作成した. 0-20 x 10-5 Mの濃度範囲のZephiに対して, Zephi濃度の増加とともにΔE値は直線的に増加した.これはμPADによって0-20 x 10-5 Mの濃度範囲のZephiの定量が可能であることを意味している.予備濃縮した5.0 x 10-5 M Zephi溶液に対するΔE値を検量線から予備濃縮後の濃度に換算すると約18 x 10-5 Mとなった. このことより, 5.0 x 10-5 M Zephiは約3.6倍程度予備濃縮されていることが分かった.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では, SA/NaOHで修飾したろ紙で予備濃縮した後, μPADに組み込まれたオプトードに溶出させ, 生じたオプトードの吸光度変化により定量するμPADの開発を検討した.その結果,作製したμPADによってZephiを3.6倍程度予備濃縮して検出することができた.今後,μPADによるZephiの濃縮倍率に及ぼす紙材料の種類,試料溶液体積,予備濃縮時間,溶離液として作用する酢酸/酢酸ナトリウム緩衝液濃度の影響を詳細に検討する予定である.
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