研究課題/領域番号 |
19K05550
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
中西 康次 兵庫県立大学, 高度産業科学技術研究所, 特任准教授 (70572957)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 軟X線XAFS / 蓄電池 / リチウムイオン電池 / 電荷補償解析 |
研究実績の概要 |
Ni組成比に対する電子構造変化を調べるため、これまで充放電深度違いのLiNi0.33Co0.33Mn0.33O2(NCM333)、LiNi0.6Co0.2Mn0.2O2(NCM622)を測定したが、昨年度に引き続きLiNi0.8Co0.1Mn0.1O2(NCM811)を測定し、これらのスペクトル変化を系統的に観察、比較した。 初期状態においてNCM333、NCM622のCoの主成分は3価、Mnの主成分は4価であることが各吸収端スペクトルから明らかとなり、NCM811においても同様であった。NiにおいてはNCM333ではほとんどが2価であったが、NCM622、NCM 811とNiの割合とともにNi3+の含有量が増加した。これは電気的中性の観点からも矛盾のない変化である。しかし、NCM811において、Niが電荷補償をすべて担うと仮定すると、Ni全体の約87.5%がNi3+になるはずであるが、スペクトル形状からはそれほどの比率含まれているようには見えなかった。Oに関して、NCM333の充電によりプリエッジの低エネルギー側に新規のピークが出現し、充電深度が大きくなるとこのピーク強度も大きくなったが、NCM622、NCM811では初期状態でこれらのピークが見られ、また、Ni含有量が増えるとともにその強度も高くなった。これはNi含有量の高いNCM622やNCM811においては初期状態からOが酸化された状態であるためと考えられ、既述の初期状態のNCMに含まれるNiの高価数成分の量論とも相関があると考えられる。なお、NCM811において充放電深度を変化させた電極を系統的に測定したものの、Oの酸化由来のピーク強度はほとんど変化がなかった。 今後、NCMのNi比率と酸素の酸化状態に関する相関をより詳細に解析し、電極高性能化のためのNCMの電子構造の理解に努める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Ni組成比違いの電極についての系統的なスペクトル解析は順調に進められており、そのスペクトル形状の変化から電荷補償機構や電子構造も明らかになりつつある。一方で、動的過程を観察するための測定機会の取得が難航している。
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今後の研究の推進方策 |
動的過程におけるNCM電極観察を実施するため、大型放射光施設の課題申請を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により研究指針の変更が生じ、結果として2020年度は予算を使うことができなかったため。
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