本研究は、超分子構造の分子間配座解析に資する固体NMR測定法開発を主な目的として、特にその代表的な対象であるアミロイド線維などの解析に適用して、その有効性を検証する。当該試料の代表として、アミロイドβ(Aβ)(1-40)に関して、同タンパク質の脂質膜上で生じるアミロイドオリゴマーの分子構造を、固体NMRを用いて解析すると共に、分子間配座を決定することにより、脂質膜上での同アミロイド線維形成分子機構の解明を目的としている。また、特に分子間配座を正確に決定するための有効な固体NMR解析法等を開発することを目的としている。 本年度は、昨年度までの一連の固体NMR測定、解析により得られた分子内、分子間原子間距離情報、および主鎖二面角情報を用いて隣接する8分子に対して抑制条件付き分子動力学計算を行った。これまでの二次構造解析から、GM1/DMPC脂質膜上で形成されたAβ(1-40)オリゴマーは、ランダムコイルのN末端に続き短い中央にβシート構造、続いて湾曲構造を経てC末端側にβシート構造を形成することが判明している。この中央、及びC末端側のβシート構造が各々異なる隣接分子の同部位と逆平行βシート構造を形成していることが判明した。
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