研究実績の概要 |
ポリビニルアルコールはアクリル酸と反応し、はしご状に重合することが期待できる。一方でポリビニルアルコールは溶解性や鹸化度に問題があるため、そのモデル化合物として、ヒドロキシ基が2つ、すなわちビニルアルコールの二量体とみなせる、ブタンジオールおよび2,4ペンタンジオール着目した。2,4ペンタンジオールはヒドロキシ基がsynの配座のmeso体とantiの配座があり、anti体については(2R,4R)-(-)-2,4-ペンタンジオールを用いることにした。これらの化合物のフーリエ変換赤外分光(FT-IR)、NMR(1H, 13C, H-H COSY, HMQC)測定 、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF/MS)による構造情報の取得を検討した。meso体は分子中に3種類の環境の炭素が存在し、13C NMRでは3本のシグナルが観測されることが予想さるが、それぞれのシグナルが2本ずつ観測され、合計6本のシグナルが観測れた。また両末端のメチル基の1Hが2重線より多く分裂して観測された。これらのことから立体障害に基づく配座異性体の存在が示唆された。このような複雑性は次のステップの解析を困難にする、あるいは鋳型重合の障害になると考え、13C NMRで3本、両末端の1Hが2重線のシグナルが観測された (2R,4R)-(-)-2,4-ペンタンジオールとアクリル酸クロリドを塩化メチレン溶媒中、トリエチルアミン存在下で反応させることにより、エステル化反応を行った。反応停止後、抽出、精製を行い、得られた生成物について、FT-IR、NMRおよびMALDI-TOF/MSによる構造解析を行った。その結果、反応停止時は原料、モノエステル、ジエステルの混合物であったが、精製後はジエステルのみとなった。また、ジエステル体の重合反応条件について文献調査を行った。
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