研究課題/領域番号 |
19K05565
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
難波 徳郎 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (80218073)
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研究分担者 |
崎田 真一 岡山大学, 環境管理センター, 准教授 (50379814)
紅野 安彦 岡山大学, 環境生命科学研究科, 准教授 (90283035)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 汚染土壌 / 放射性セシウム / 重金属元素 / 溶融揮発処理 / 塩化物添加効果 |
研究実績の概要 |
本研究は以下に示す3つの内容について計画している。研究Ⅰ:各処理工程における基材構成元素の揮発・溶出挙動の調査,研究Ⅱ:各固体の塩基度評価,構成元素の状態分析,研究Ⅲ:熱力学計算を併用した揮発・溶出挙動の予測精度の向上 研究Iでは,3つの工程に分かれた無害化処理について,工程毎の処理条件(基材や添加物の種類や量,溶融温度,時間,雰囲気など)を系統的に変化させ,構成元素の気相,液相,固相への分配挙動を調査する計画である。本年度は,このうち溶融処理における元素の分配挙動を調査した。 Csを含む模擬汚染土壌について,種々の溶融条件が土壌溶融時のCs揮発挙動に与える影響を評価し,以下の結果を得た。1)溶融温度が高いほどCsの揮発率は増加した。2)添加する塩化物のCs揮発促進効果は MgCl2 < NaCl < CaCl2であり、飽和蒸気圧が低いものほど促進効果が高いことがわかった。3)揮発促進剤として用いた塩化物は、一度分解され、土壌中のアルカリ金属と反応してアルカリ塩を形成した。4)アルカリ塩は表面自由エネルギーが小さいため、溶融の過程で酸化物相と分離し試料表面へと析出した。さらに高温で溶融を行うと表面のアルカリ塩がすべて揮発すると考えられる。 また,Pb,Cd,Crを含む模擬汚染土壌については,融剤としてNa2CO3,塩化物としてCaCl2・2H2Oを用いて溶融処理を行ったところ,以下の結果を得た。1)融剤と塩化物の添加量が重金属元素の揮発率に大きく関係していることが分かった。2)PbとCdは類似した溶融挙動を示し,融剤の添加量が少ない時に高い揮発率を示した。3)Crは融剤添加量依存性が低く,塩化物添加量の増加につれて揮発率も増加した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要に示した通り,本研究は3つの内容に分けて研究計画を立てている。研究Iは,異なる処理条件に対する,除去対象元素の固相,液相,気相への分配挙動を調べるものであり,本研究において最も重要な実験事実の収集作業に当たる。先行しているCs含有模擬汚染土壌の溶融処理については,添加物の種類や溶融温度についても変化させた実験を行っており,多くのデータを得ることができた。重金属元素含有模擬汚染土壌については,予備実験によるデータ収集を行っていないため,本年度は添加物の種類は変えておらず,添加量の影響調査に留まっている。溶融温度も含め,より多くの条件を系統的に変化させて実験を行う必要がある。しかし,全体としては計画通りに進捗していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究Iについては,添加物の種類や量,溶融時間や溶融雰囲気など,変化させる処理条件をさらに増やし,データ数を増やすことで分配挙動の処理条件依存性を明らかにする。 研究IIについては,塩基度の評価手法が別の研究により進行しており,本研究で用いる試料に適用するための準備が進んでいる。こちらについても,全体の計画にしたがって進むものと考えている。 研究IIIについては,熱力学計算ソフトを購入するための経費が不足しており,実施の目途が立っていない。科研費以外の外部資金の獲得により,計画の実施を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,雰囲気調整可能な電気炉の購入を計画していた。他の外部資金と合わせて購入する計画であったが,外部資金の獲得ができなかったため,購入には至らなかった。このため,支払われた経費に残額が生じた。なお,現有の電気炉を修理することで対応したため,研究計画に遅れなどは出ていない。購入を予定していた電気炉の性能に近づけるべく,電気炉関係の物品を次年度に購入する計画を立てている。
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