研究課題/領域番号 |
19K05566
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研究機関 | 滋賀県立大学 |
研究代表者 |
原田 英美子 滋賀県立大学, 環境科学部, 教授 (20232845)
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研究分担者 |
保倉 明子 東京電機大学, 工学部, 教授 (20343569)
永川 栄泰 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部バイオ応用技術グループ, 主任研究員 (30587415)
黒沢 高秀 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (80292449)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オオカナダモ / 水生植物 / セシウム / マンガン / Mn酸化細菌 / 付着微生物 / 放射光X線分析 / 無菌植物 |
研究実績の概要 |
オオカナダモ植物体表面での酸化マンガン生成機構を明らかにする必要がある。オオカナダモと特定の微生物株との相互作用を調べるため、まず植物を無菌化する実験を行った。日本のオオカナダモは種子を作らないため、茎頂培養法および表面滅菌法の2種を検討した。茎頂を切り出して寒天培地上で培養し、種々の植物ホルモンを添加する等の条件検討を行ったが、無菌植物体を得ることができなかった。一方、ごく希薄な次亜塩素酸ナトリウム水溶液で植物体を長時間処理すると、確率は低いながらも滅菌処理後に側芽が生長することが明らかになった。得られた無菌植物体に、放射光を用いたXANES(X線吸収端近傍構造)法を適用し、試料中に含まれるMnの化学形態の分析を行った。滅菌植物体のMnは2価の還元型であり、琵琶湖水圏で得られたオオカナダモでは酸化型のMnが検出された。この結果から、オオカナダモ植物体内に含まれているMnは還元型であり、酸化型のMnの生産は植物ではなく付着微生物の作用であることが示された。 水生植物のバイカモ、ナガエミクリ、クサヨシ、イグサを用いた放射性セシウム集積の調査については、福島県南相馬市の農業用水路にて2020年に3回(初夏、晩夏、秋)、2021年に1回(冬)の調査を行い、植物・水・底泥を採取した。放射性セシウム量を分析した結果、水生植物の生活型により放射性セシウムの集積量と季節変動の傾向が異なることが考えられた。併せて、サンプリング地付近の水生植物に関する基礎情報の集積にも努めた。 水生植物の付着微生物を調べたところ、南相馬市のオオカナダモよりEnterobacter属と判別されるMn耐性の単離株を得た。バイカモから単離されたSerratia属は検出されず、水生植物の付着微生物は、同一地点で生育する植物でも異なっていた。Mn酸化能を持つ微生物については引き続き単離操作を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナウイルス感染対策防止による登校・出勤・出張の制限のため、実験室での作業や野外調査は停滞した。また、複数の学会が中止もしくは延期となり、成果発表の機会が失われた。一方、昨年度からの持ち越しとなっていた金属分析前処理装置の導入が完了し、処理時間の短縮が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に検討したオオカナダモの無菌植物作成技術については、実験手法を確立して無菌植物体のバイオマスを確保できるようさらに検討する。無菌条件で側芽を生長させて十分大きな無菌植物体を確保し、再度放射光分析を行い、マンガンの化学形態を調査する。また、過去にオオカナダモから得られた付着微生物株を無菌植物に添加して培養し、酸化マンガンの生成を評価する。 淡水性の微生物を取り扱う手法を応用することでの付着微生物株の単離を進め、得られた菌株で酸化マンガン産生能を評価する。福島県東部での調査も可能な限り実施し、放射性セシウムの集積量と季節変動が水生植物の生活型に依存しているという、2020年度に得られた結果について再現性を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際学会が中止になる等の理由から、成果発表の一部を2021年度に延期した。
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