研究課題/領域番号 |
19K05568
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
坪郷 哲 東京理科大学, 薬学部生命創薬科学科, 助教 (90620815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 環縮小反応 / Claisen型転位反応 / フロー合成 / 8員環状エーテル化合物 / Ullmann型反応 / スカンジウム触媒 / ルイス酸 / ブレンステッド酸 |
研究実績の概要 |
フロー精密有機合成は、昨今の最も重要な課題の一つである。これまでに多数報告されている水素移動型の炭素-炭素結合生成反応ではない炭素-酸素結合生成反応である転位反応を行うことが本研究の目的である。特に触媒制御による立体選択的Claisen型転位反応をZ-オレフィンを有した8員環状エーテル化合物の環縮小反応へと適用する。本研究は、原料である8員環状エーテル化合物の効率的合成、バッチ反応系およびフロー反応系による転位反応から構成されるが、本年度は、出発原料の合成およびClaisen型転位反応の検討をバッチ反応系にて行った。近年、中員環化合物は医薬品候補薬として注目を浴びており、特に8員環状化合物は、他の中員環化合物と違い特異な化学的性質を有しているため非常に興味深い化合物である。これまでに筆者らはアレロパシー活性化合物であるHeliannuol Aの不斉全合成研究を通じてUllmann型C-O結合生成反応を用いると他の全合成例に比べても8員環状エーテル化合物が簡便に合成できることを明らかとしている。そこで、Ullmann型C-O結合生成反応により出発原料であるZ-オレフィンを有した第3級8員環状エーテルの合成を行ったところ、ベンジル位およびホモベンジル位にアルキル置換基を有した多数の基質が高収率にて得られることを明らかとした。また、得られた原料である8員環状エーテル化合物のClaisen型転位反応の検討を行ったところスカンジウム触媒をはじめとした様々なルイス酸触媒およびブレンステッド酸触媒を用いると反応が円滑に進行することを明らかとした。特にスカンジウム触媒を用いた反応においては高ジアステレオ選択的に目的物が得られることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究における出発原料であるZ-オレフィンを有した第3級8員環状エーテルの合成法が確立された。一般的に中員環化合物である8員環状化合物は、5-7員環化合物と違い大きな環歪みを有していることおよびエントロピーによるエネルギーの利益を得られないことより合成が難しいが、Ullmann型C-O結合生成反応を用いることにより高収率にて合成できることを明らかとした。これら8員環状化合物は、他の中員環状化合物と違い特異な化学的性質を有しているため非常に興味深い化合物であり、医薬品候補薬として注目を浴びているため今後の展開が期待される。また、バッチ反応系において8員環状エーテル化合物のClaisen型転位反応に適用可能な新たな均一系触媒を見出した。特にスカンジウム触媒を用いると高いジアステレオ選択性を持って転位反応が進行することを明らかとした。さらに、不均一系触媒への可能性を探るため様々な均一系触媒の検討を行ったところリン酸のようなブレンステッド酸触媒も本反応系に適用可能であることを見出した。このようにバッチ反応系において反応が確立されたので固定化触媒開発へと展開が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
バッチ反応系において最適な固定化触媒の開発を様々な方面から行った後、フロー反応へと適用する。一方で、天然物および医薬品合成において重要な光学活性化合物へと適用可能なエナンチオもしくはジアステレオ選択的な反応のさらなる検討を行う。また、転位生成物の誘導体化の検討を行い、連続フロー精密合成を目指す。
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