フロー精密有機合成は、昨今のGSCの観点から重要であり、これまでに様々な炭素-炭素結合生成反応が開発されてきた。一方で、炭素-酸素結合生成反応は、フロー合成において研究がほとんどなされていない。そこで、立体選択的転位反応を用いることにより立体選択的炭素-酸素結合生成反応を達成できるのではないかと考えた。本研究では、立体選択的Claisen型転位反応を鍵とした骨格転位による8員環化合物の6員環化合物への環縮小反応をフロー反応系にて行うことを目的とした。まず、Z-オレフィンを有した第3級8員環状エーテルの合成法の確立を目指して検討を行ったところ、銅-DMAP触媒を用い、高温にて反応を行うことにより目的とする様々な8員環状エーテルが得られた。次に、バッチ反応系にて8員環化合物の6員環化合物への転位反応の検討を行ったところ、ジイミノピリジン(DIP)配位子もしくはPybox配位子とのスカンジウム錯体を用いることによりジアステレオ選択的に進行することを明らかとした。そこで、均一系触媒および不均一系触媒による環縮小反応の検討をフロー反応系にて行った。まず、均一系触媒であるスカンジウム-DIP触媒を用いた検討を行った。ベンジル位に置換基を有した基質を用い、反応を行ったところ目的とする環縮小反応が高い変換率、良好なジアステレオ選択性にて進行した。次に、不均一系触媒による環縮小反応の検討を行った。合成したポリスチレン担持型Pybox配位子より調製したスカンジウム触媒を用い、フロー反応系にて環縮小反応を行ったところ、目的とするクロマン化合物が高い変換率、良好なジアステレオ選択性にて得られた。この様にフロー反応系にて8員環状エーテルの環縮小反応が進行することを見いだした。今後は、天然物合成に適用可能なより複雑な化合物を合成すべく検討を行っていきたいと考えている。
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