研究課題/領域番号 |
19K05569
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
米田 哲也 日本大学, 理工学部, 教授 (00307802)
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研究分担者 |
小泉 公志郎 日本大学, 理工学部, 准教授 (10312042)
伊藤 賢一 日本大学, 理工学部, 准教授 (10373002)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルミナ担持白金触媒 / γ型アルミナ / メソポーラスアルミナ / 触媒調製法 / 有機ホスホン酸 |
研究実績の概要 |
中性アルミナ(粒径:32-64 μm)およびワームホール型メソポーラスアルミナ(平均ポアサイズ:3.8 nm)を別々に担体に用いた4%-白金触媒に,有機ホスホン酸の第1ユニットとしてオクタデシルホスホン酸(直鎖炭素数が18個)を白金触媒のアルミナ上に導入した。方法はテトラヒドロフラン溶液中に溶解し,溶媒のテトラヒドロフランを蒸発させるT-BAG法にて作成した。T-BAG法の前後で,白金ナノ粒子の集積および金属の溶解は観察されなかったが,比表面積は中性アルミナ担体で9%およびメソポーラスアルミナ担体で15%減少した。また,1回のT-BAG処理で1平方ナノメートル当たり0.67個あるいは0.38個の結合数を確認した。 これらの表面修飾の有無による白金触媒による4-クロロフェノールの水素化脱塩素反応を98%水溶液中373 K,水素圧0.1 MPaの条件で検討した。反応時間3分でのターンオーバー数(TON:表面白金原子当たりの4-クロロフェノールの反応回数)は,表面修飾していない白金触媒の場合,中性アルミナ担体で489回およびメソポーラスアルミナ担体で87回であった。一方,オクタデシルホスホン酸で表面修飾した白金触媒のTONは,中性アルミナ担体で834回およびメソポーラスアルミナ担体で114回になり,オクタデシルホスホン酸の結合化によってそれぞれ1.7倍および1.3倍にまで脱塩素化活性が向上させることを達成した。しかしながら,中性アルミナの2倍の比表面積を持つメソポーラスアルミナ担体の白金触媒は本来より高い触媒活性をもたらす予想に反して,中性アルミナ担体の15-18%までその脱塩素活性が低下した。一部の白金粒子はメソ孔の内部に存在していており,反応気質が活性点へ届くまでの律速が指摘された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
微粒子の白金を担持させ,中性アルミナで137 m^2/g,さらにメソポーラスでは289 m^2/gまで比表面積が大きな触媒を作成できた。さらに,この有機ホスホン酸ユニットの結合において担体へ広範囲な固定化が期待された。中性アルミナにおいては期待通りの水素化脱塩素活性の向上を達成した。一方,中性アルミナ担体よりも比表面積が約2倍も大きいメソポーラスアルミナ担体の白金触媒について,水素化脱塩素反応の活性が15から18%にまで低下した要因の調査に時間を要した。 また,アルミナ表面上への有機分子の拡張の反応で,チオールエン反応について検討を行ったが反応進行に伴う条件検討と反応結果の確認に時間を要した。チオールエン反応ではホスホン酸による結合とチオールによる白金粒子への結合の競争的になり,ホスホン酸の結合化が低下することも予想される。これは有機ホスホン酸分子の選定と結合選択の順序で対応する。同時に,アジドと多重結合による複素環形成反応ではこの部分の問題点は少ないと予想する。これにより,研究はやや遅れていると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
中性アルミナ担体の比表面積が約2倍も大きいメソポーラスアルミナ担体の白金触媒について,その水素化脱塩素活性が15から18%にまで著しく低下した点は予想に反した。 今年度は,両アルミナ白金触媒上に有機ホスホン酸の第1ユニットの導入,および拡張する第2ユニットの結合化法について検討する。ただし,中性アルミナの高い触媒活性を優先的に活用する。クリック反応を用いて以下の手法で検討する。(1)1価の銅触媒を用いたアジドと多重結合から温和な複素環の環形成反応。(2)硫黄化合物のチオールと二重結合によるチオールエン反応。ラジカル開始剤,光反応の利用。 ホスホン酸の選択順でその反応率および反応の安全性を事前に調査する必要がある。最後に,これらの分子鎖で拡張された表面を持つ白金触媒によるモノクロロベンゼン同族体の水素化脱塩素反応を調査する。
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