研究課題/領域番号 |
19K05576
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
平石 知裕 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (20321804)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | βペプチド分解酵素 / 環境メタゲノム |
研究実績の概要 |
βペプチドは、αペプチドの長所を維持しつつ易分解性を改良した材料であり生体内などでの利用が期待される。申請者が発見したβペプチド分解酵素は、その反応可逆性によってバイオマス由来のアスパラギン酸から新奇なβペプチドであるβポリアスパラギン酸(β-PAA)を合成できる。しかし、この系の反応効率は高くないため、合成に最適な酵素の獲得・創成が必要である。一方、現在使用可能な全ての酵素は、環境中の培養可能な1 %未満の微生物から得られたものであり、残り99 %の微生物資源の有効利用が望まれている。そこで本研究では、環境試料から直接DNAを抽出してメタゲノムライブラリを作製し、βペプチド分解活性を指標としたスクリーニングを行い、難培養微生物由来新規βペプチド分解酵素の獲得を目指す。さらに、βペプチド骨格を有する機能性材料開発を指向した酵素の高性能化・高機能化を行うとともに、本酵素の構造機能相関を調べて活性発現機構を解明する。 本年度は、難培養微生物由来βペプチド分解酵素の獲得を目指して、大腸菌を宿主としたメタゲノムスクリーニング系の構築を行った。まず、環境試料(土壌あるいは河川水)から環境DNAを抽出・増幅した後、断片化および断片化DNAの精製条件を検討した。その結果、低断片化DNAの除去及び外部遺伝子の除去が、良質なライブラリ作製には肝要であることが示唆された。さらに、我々が有している分解酵素をポジティブコントロールとして用い、活性スクリーニングの条件検討を行ったところ、その最適条件を決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の達成には、「良質な環境DNAライブラリの作製」と「効果的な活性スクリーニング系の構築」が重要となるが、低断片化DNA・外部遺伝子の混入が環境DNAライブラリの劣化を招いたことが判明し、これらの除去方法の確立の時間が必要となった。また、「活性スクリーニング系の最適化」に予想以上に時間を要したため、当初の予定より研究計画全体がやや遅れていると判断している。 さらに、コロナウイルス感染拡大に伴う事業所閉鎖により6ヶ月ほど実験が実施できない状況が続いたことが、本研究課題推進に大きな影響を与えた。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度において「混入した低断片化DNA除去方法」、「外部遺伝子除去方法」及び「活性スクリーニング法」をほぼ確立できた。そこで令和3年度では、ライブラリの作製後、速やかに「効果的な活性スクリーニング」を実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度において研究がやや遅れ気味であった結果、実施予定であった「βペプチド分解酵素のハイスループットスクリーニング」等に必要な装置や消耗品の購入を令和3年度に延期したために次年度使用額が生じた。 令和3年度では、「環境DNAライブラリの構築」および「βペプチド分解酵素のメタゲノムスクリーニング」を実施し、得られた酵素の生化学的性質や反応特性を明らかにする。そのために必要な培養装置・遺伝子増幅装置・活性測定装置などを購入する予定である。一方、消耗品については、比較的高額な生化学試薬が必要となる上、使い捨てのプラスチック器具を多用することになる。さらに、DNA配列解析のサンプル数が多数になることが予想されるため、その解析に使用する試薬・消耗部品の購入費用および依頼分析費用を消耗品費として計上した。この他、成果報告発表の旅費や論文投稿費を計上している。
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