研究課題/領域番号 |
19K05578
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
覚知 亮平 群馬大学, 大学院理工学府, 助教 (00743816)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アミノ酸 / 多成分連結反応 / 高分子合成 |
研究実績の概要 |
α-アミノ酸は高分子化学においても最も重要なビルディングブロックの一つであり、例えばα-アミノ酸がアミド結合で連結されたポリペプチドのモノマー単位となる。しかしながら、双性α-アミノ酸自身を繰り返し単位とする高分子の合成はほとんど知られていない。 このため、前年度までに、Petasis-3CRの改良法の開拓に従事した。具体的には、通常のPetasis-3CRが有機ボロン酸、グリオキシル酸、アミン間の反応であるのに対して、我々の変法は有機ボロン酸の代わりにそのメチルイミノ二酢酸(MIDA)エステル体が使用可能であることを明らかにした。具体的には、有機ボロン酸のMIDAエステル、グリオキシル酸、アミン間の3成分連結反応が塩基性条件下で進行すること明らかにした。 本年度は前年度までの知見を活用し、有機ボロン酸MIDAエステルを有する高分子を合成し、その改良Petasis反応に対する反応性を詳細に評価した。はじめに、有機ボロン酸MIDAエステルを有する高分子としてポリスチレン誘導体であるpoly(4-vinylphenyl MIDA boronic ester) (PSt-BMIDA)を設計・合成した。通常のボロン酸含有ポリマーと比較し、PSt-BMIDAはDMSOやDMFへの溶解性を示し、改良Petasis反応への展開が十分に可能であった。具体的には、PSt-BMIDAに対してグリオキシル酸とジベンジルアミンをDMSO中で塩基存在下で反応させることで、対応する高分子状α-アミノ酸が合成可能であることを各種NMR, FT-IR, TG-DTA測定によって明らかにした。さらに、本反応の進行はモデルポリマーの合成・評価によっても支持され、改良Petasis反応が高分子合成へと適用可能であることを実験的に示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
はじめに、DMSO中、80 ℃でAIBNを開始剤とした4-ビニルフェニルボロン酸MIDAエステル(St-BMIDA)のラジカル重合によって、PSt-BMIDAを高転化率(>95%)で合成した。得られたPSt-BMIDAはDMSO、DMFなどの有機溶媒に可溶であり、架橋反応が効果的に抑制されていることが示された。 次に、改良Petasis-3CRを高分子修飾反応に応用することで高分子状α-アミノ酸の合成を行った。具体的には、PSt-BMIDAに対してTMAOHを塩基として、ジベンジルアミン、グリオキシル酸を反応基質とした改良Petasis-3CRによる高分子修飾(Petasis-PMR)を行った。上述した様に、改良Petasis-3CRの最適条件では、反応試薬の当量比を[ボロン酸エステル]/[アミン]/[グリオキシル酸]/[TMAOH] = 1/3/3/0.5に設定して改良Petasis反応を行った。 改良Petasis反応後のポリマーのFT-IRスペクトルにおいて、1680~1820 cm-1付近のMIDAエステルに由来するピークが消失し、1700 cm-1付近のカルボン酸に由来するピークが出現したことが確認された。さらに、改良Petasis反応後のポリマーの1H NMRスペクトルにおいて3.7~4.4 ppmの MIDAエステルに由来するピークが完全に消失し、α-アミノ酸のメチンプロトンに由来する特徴的なピークが4.6 ppmに、さらにジベンジルアミン骨格に由来するピークが3.6~4.3 ppmに出現した。以上の結果から、改良Petasis反応は高分子反応としても円滑に進行することが明らかになった。 なお、本研究成果はすでに誌上発表を行っている(Macromol. Chem. Phys. 2021, 222 (2), 2000347)。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、想定以上の成果が得られている。最終年度では改良Petasis-3CRに基づく高分子反応の有用性を更に拡張する。本年度は、改良Petasis反応の液中反応としての有用性を実験的に示せたため、最終年度では引き続き合成化学の深化に従事し、本法に適用可能なモノマーやポリマーの範囲を拡張する。さらに、改良Petasis反応の反応条件最適化をすすめ、さらに簡便な実験法の開発や本反応の固相反応への展開を探索する。
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