研究実績の概要 |
本研究では、一般に精密重合が困難であると言われている重縮合に対し、成長末端の活性化部位とモノマー捕捉部位の立場が互いに入れ替わる循環機構を持つ触媒を提案し、重縮合における新しい制御概念の実証を行う。これを達成するために、二分子の触媒を柔らかいスペーサーで連結した触媒を提案している。重合中、(1)ポリマー成長末端に結合した触媒が、(2)モノマーを捕捉し、(3)分子内縮合反応を行うことで、ポリマー-モノマー間のみの選択的成長を導く。 初年度、二年度に引き続き触媒部位にヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)骨格を用い、鎖長の異なるスペーサーで2分子を結合した二官能性触媒を合成した。得られた二官能性触媒に重合開始基(開始末端基)となるアセチル基を導入し、L-プロリン(L-Pro)の重合を行った。特に、水/アセトニトリル混合溶媒中、4℃で重合を行ったところ、分子量約2,000、分子量分散度1.2程度の分子量が揃ったpoly(L-Pro)を得ることに成功し、二官能性触媒が重合制御に有効であることが示唆された。 さらに、L-Proに加えて、他のN置換α-アミノ酸であるサルコシン(Sar)やβ-アミノ酸であるニペコチン酸(Nip)の重合も検討し、この触媒系の適用範囲の調査も行った。興味深いことに、ニペコチン酸(Nip)をモノマーとして重合を行うと、ほぼ環状poly(Nip)のみが生成していることが、MALDI-TOF-MS解析により明らかとなった。メカニズムは明らかになっていないが、新しい大環状ポリマーの生成方法への展開が期待できる。 将来の展望として、より高分子量体のポリマー生成、ブロック共重合体の合成を始めとした、より高活性、より幅広いモノマーに適用可能な触媒系の開発を目指す。
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