研究実績の概要 |
InosineはD-リボースとHypoxanthine (Hyp) からなるヌクレオシドで, Guanine(G)以外のCytosine(C), Adenine(A), Thymine(T)と塩基対を形成する“ゆらぎ塩基”として作用する. つまり, Gを除く塩基を網羅的に検出できる機能性官能基として, 一塩基多型(SNP)を原因とする疾患(例えばKRAS遺伝子一塩基変異群)などのプロービングや遺伝子治療薬への展開が可能となる.前述のKRAS遺伝子一塩基変異群の網羅的な検出を目的として, これまでにペプチド核酸 (Peptide Nucleic Acid; PNA) の側鎖に,Hyp基の6位をベンジル基で保護したPNAモノマー(Fmoc-Hyp(OBn)-OH)を合成したが収率は低い(22.8%)ことが問題となっていた. これらの問題点を踏まえ,本年度ではPNAモノマー(Fmoc-Hyp(OBn)-OH)の高収率合成法を確立し,このモノマーを用いた複数のoligoPNA(Hyp)ならびにInchworm型PNA-Polyethylene glycol (PEG) コンジュゲート(i-PPc(Hyp))を合成した.oligoPNA(Hyp)と合成DNAとの相補鎖形成挙動を解析した結果,Gを除く他の塩基(A, T, C)に対してより安定に相補鎖を形成することが示された.これらの結果は,i-PPc(Hyp)により塩基配列依存的なプロービングの可能性を示している.また,細胞内輸送経路の特定を念頭に蛍光官能基(SRB)で修飾したi-PPc(Hyp)を合成し,細胞内への輸送経路を検討した結果,細胞内にマクロピノサイトーシス経路で取り込まれることが示された.
|