研究課題/領域番号 |
19K05585
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
平野 朋広 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (80314839)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カチオン重合 / ビニルエーテル / 溶媒和イオン液体 / 立体規則性 / RAFT |
研究実績の概要 |
本研究では,Li塩とルイス塩基からなる溶媒和イオン液体存在下でのビニルエーテル類のカチオン重合において,「成長カチオン種の直接安定化」による制御重合系の確立と立体制御の達成を目的としている.今年度は,RAFT機構との組み合わせによるイソブチルビニルエーテル(IBVE)の簡便なリビング重合系の開発について検討を行った.また,2,3-ジヒドロフラン(DHF)の重合における高分子量化についても検討を行った. まず,水からの自発的なIBVEのカチオン重合を抑制するために,ルイス塩基を検討した.LiNTf2存在下,酢酸エチルの代わりに1,2-ジメトキシエタン(DME)を加えると,60°Cに温度を上げても自発的な重合が進行しないことを見出した.この系にビニルエーテル・トリチオカーボネート型RAFT試薬を加えると定量的にポリマーが得られた.RAFT試薬だけを添加してもポリマーが得られなかったことから,溶媒和イオン液体がRAFT機構の触媒として働いたと考えられる. ポリマーの1H NMRスペクトルにはトリチオカーボネート基が結合した末端のシグナルが観測され,期待通りRAFT機構でポリマーが得られたと考えられる.しかし,アルデヒドやアセタール,内部オレフィンによるシグナルも観測されたことから、アルコキシ引き抜き反応などの副反応が併発していることも確認された. LiBF4/酢酸エチル存在下,アセトニトリル中-40°Cで環状モノマーであるDHFの重合を行うと,分子量が数千のオリゴマーが自発的に得られる.系中に存在する水による開始や連鎖移動が起こるだけでなく,ポリマーが貧溶媒であるアセトニトリルから析出するためと考えられる.そこで,LiBF4/DME存在下CH2Cl2中-78°Cで開始剤としてBF3/OEt2を添加したところ,数平均分子量が18,000を越えるポリマーが得られることを見出した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
LI塩やルイス塩基,モノマー,溶媒などの組み合わせを適切に選ぶことで,分子量制御につながる成果が着実に出ているため.
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今後の研究の推進方策 |
RAFT機構と組み合わせることで,分子量制御に関する成果が出つつあるが,分子量の制御までには至っていない.そこで,RAFT試薬の構造を含め簡便なリビング重合系の実現に必要な条件検討を継続して行っていく.また,光学活性なルイス塩基などを用いることで,得られるポリマーの立体制御も継続して行っていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大で参加予定の学会が中止になったりオンライン開催になったりして,学会参加費や旅費が必要なくなったため.また,学生が自宅待機を余儀なくされる時期があり,当初の計画通りには実験をすすめることができなかったため.繰越した予算は,実験器具の購入や国内外の学会参加費として支出する予定である.
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