研究課題
有機ー無機ハイブリッド材料であるポリドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)を含有する立体規則性高分子(PMAPOSS)を精密重合法に基づき調製した。開始剤として、sec-BuLiとGrignard試薬をそれぞれ選択した。sec-BuLi を用いた系からはアタクチックのPMAPOSSが得られた。一方、Grignard試薬を用いて調製したPMAPOSSはイソタクチックに制御されることが明らかとなった。それぞれの重合反応がリビング的に行われていることを評価するために、ブロック共重合体の調製を試みた。PMAPOSSを重合した系に対してメチルメタクリレートを加えた。sec-BuLiおよびGrignard試薬を開始剤として用いた系いずれの重合系からも、ブロック共重合体が得られた。このことから、これらの重合はリビング重合で進行していると結論づけた。PMAPOSSに対して少量のキラルドーパントを添加することで、PMAPOSSの一方巻螺旋構造制御を試みた。円二色性(CD)および振動円二色性(VCD)測定法に基づき、高分子の二次構造を評価したところ、立体規則性をイソタクチックに制御したPMAPOSSからは螺旋構造形成に起因する特異な分裂型のコットン効果が観測された。一方、アタクチックのPMAPOSSからは分裂型のコットン効果は観測されず、高分子の立体規則性が螺旋構造形成に大きな影響をおよぼすことを明らかにした。高分子の二次構造をより詳細に理解するために、微小角入斜広角 X線回折(GIWAXD)測定に基づきPMAPOSS/キラルドーパント膜を評価した。GIWAXDに基づき評価より、PMAPOSSが形成する螺旋は1.63 nmのピッチからなることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
ブロック共重合体の片側成分に螺旋構造を誘起することで、階層的な螺旋構造からなるミクロ相分離構造を発現することを目標として掲げている。既に立体規則性を精密に制御したポリへドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)含有高分子(PMAPOSS)を調製し、さらにキラルドーパントを添加することで、PMAPOSSの一方巻螺旋構造制御を成し遂げている。既にPMAPOSSの合成およびブロック共重合体の合成に関する内容は論文としてまとめ、J. Polym. Sci. Part A: Polym. Chem.に掲載された。また、その内容が評価され、論文の表紙として採択されている。高分子の二次構造に関する評価も円二色性(CD)、振動円二色性(VCD)測定法および微小角入射広角X線回折(GIWAXD)測定より行っており、解析手法も既に確立した、。ブロック共重合体中でも、PMAPOSS成分の螺旋構造に関する評価は既に終えている。二次構造に関する内容も現在論文を投稿中である。令和2年度は、PMAPOSSの螺旋構造制御およびブロック共重合体の調製を目指しており、研究の進捗は概ね順調に進展している。
令和元年度にポリへドラルオリゴメリックシルセスキオキサン(POSS)含有高分子(PMAPOSS)はキラルドーパントを少量添加することで螺旋構造を形成することを見出している。さらに、ブロック共重合体に展開することで、より安定な螺旋構造を形成する挙動が観測されつつある。本年度は分子鎖熱運動性の異なる各種高分子とPMAPOSSからなるブロック共重合体の調製を行い、PMAPOSSの螺旋構造形成に与える支配因子の特定を目指す。ブロック共重合体が形成するミクロ相分離構造に対して、螺旋構造が与える影響を詳細に検討することで、有機ー無機ブロック共重合体からなる新規ヘリカル層形成およびその発現メカニズムを物理化学的な観点から評価していく。ミクロ相分離構造の評価には微小角入射小角X線散乱(GISAXS)測定を予定している。すでに大型放射光施設SPring-8でのビームタイムは確保しており、令和2年度いつでも実験が進められる条件下にある。研究より得られる知見を論文としてまとめていく。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
Journal of Polymer Science Polymer Chemistry
巻: 57 ページ: 2181-2189
DOI: 10.1002/pola.29498