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2019 年度 実施状況報告書

疎溶媒効果・分散力を活用したインターロック化合物の合成と機能性分子集合体の創出

研究課題

研究課題/領域番号 19K05591
研究機関徳島文理大学

研究代表者

富永 昌英  徳島文理大学, 薬学部, 准教授 (60361507)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードインターロック化合物 / カテナン / 環状分子 / 自己集合 / 結晶構造 / 動的挙動 / 球状微粒子
研究実績の概要

本研究課題は新規インターロック化合物群の合成と、これらをビルディングブロックとした分子集合体を作製することである。分子レベルでの外部刺激によるインターロック化合物の立体構造や動的挙動変化をマクロサイズの超分子材料に変換することによる、各種物性の改変および新機能の創出を目的としている。本年度は、以下の研究を実施した。
(1)クロロフェノールを有する二置換アダマンタンと3,6-ジクロロテトラジンの溶液を、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを含むアセトニトリル溶液に滴下することにより、環状分子(1)を24%、[2]カテナン(2)を30%の収率で得た。単結晶X線構造解析により、1は六角形の環状構造であり、カテナンは二分子の環状分子が直行した構造であった。また、ブロモフェノールをもつ二置換アダマンタンを用いて塩化メチレン中で反応を行うと、環状分子(3)は46%、カテナン(4)は33%の収率であった。
(2)クロロフェノールを有する二置換アダマンタンと3,6-ジクロロテトラジンとの芳香族求核置換反応により、前駆体を合成した。これとブロモフェノールをもつ二置換アダマンタンとの反応により、異なるユニットからなる非対称な環状分子(5)を36%、そのカテナン(6)を16%の収率で得た。結晶構造解析から、それぞれの環骨格のコンフォメーション、配向は1と2の構造と類似していることが示された。
(3)アダマンタンを有する環状化合物が多種多様な条件下で、中空球状集合体などのさまざまな分子集合体を経由して単結晶を生成することを報告してきた。[2]カテナンのクロロホルム溶液にメタノールを加えた後、走査型電子顕微鏡測定から直径約200-300 nmの球状集合体が生成することが分かった。これは、脂溶性のアダマンタン、芳香族のハロベンゼン、テトラジンの三つのユニットから構成されていることに起因していると思われる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、(1、2)カテナンの新規合成と、(3)カテナンを基盤とした分子集合体の構築について検討を行った。(1)に関して、特異な酸化還元、発光特性を有するテトラジン部位をもつ環状分子とカテナンの合成に成功した。両化合物をあわせた収率は高く、かつ市販の有機化合物から二段階で容易に合成できることから汎用性は高いと考えられる。(2)に関して、同様の合成手法で非対称な環状化合物とそのカテナンを合成した。カテナン生成については、アダマンタンの環状骨格への導入が重要であることが示唆された。この特性を生かした[3]カテナンなどの高次インターロック化合物の作製へと展開できる。さらに、得られた環状分子の単結晶は、分子間相互作用によりチャンネルをもつネットワーク構造であり、包接溶媒分子を除去することにより安定な結晶性の多孔質物質として活用できることが分かった。アダマンタン部位に由来するファンデルワールス力が結晶の安定化に寄与することが示唆された。この多孔質結晶を緑茶の香り成分として知られている青葉アルコールに浸漬すると、ゲスト分子が吸着された結晶が得られ、その立体構造を決定することに成功した。同様の結晶スポンジ法から、青葉アルデヒドの構造も同定した。このような多孔質材料をカテナンからなる結晶についても同様に応用できる可能性がある。(3)に関して、カテナン骨格上の置換基が異なる場合でも、同様に球状集合体を形成することが示された。カテナンには複数の電子不足のテトラジン環を4つ有しているため、アニオンや芳香族分子との相互作用による分子集合体の形態変化、動的挙動について検討する予定である。
以上の結果・知見は、昨年度の目標をおおむね達成しており、本年度以降の新規インターロック化合物の合成と機能性材料の開発と機能開拓に向けて、重要な知見が得られた。

今後の研究の推進方策

本年度以降は、インターロック分子ライブラリーの拡充を目指して、多様なカテナンとロタキサンの合成を検討する。芳香族求核置換反応により構築したカテナン上のハロゲン原子およびテトラジン環を用いて、1)カップリング反応によるベンゼン誘導体部位に機能性分子を導入、2)逆Diels-Alder反応による修飾、を行う。また、芳香族求核置換反応から、1)グラブス触媒によるオレフィンメタセシス反応、2)末端アルケンの銅による酸化的カップリング反応、3)ハロゲン化アルキルによるWilliamsonエーテル合成反応、4)クリック反応などに拡張し、[3]カテナン、ソロモンリング、ボロミアンリングなどの高次インターロック化合物の合成に挑戦する。置換基・官能基、および溶媒、アニオン添加、酸化還元によって、カテナン中のリングの配向・回転制御、および光学特性・アニオン認識能の改変を目指す。アダマンタン部位を有する環状分子と鎖状分子を疎溶媒効果・分散力により擬ロタキサン構造を形成させる。これにストッパーとして機能性分子を用いることにより、ロタキサン化合物群を作製する。外部刺激・環境によって、鎖状分子のコンフォメーションを改変し、屈曲・シャトリング運動などの動的挙動を制御する。インターロック化合物群を用いて、サイズや安定性の異なる中空球状集合体を作製する。外部刺激・環境(温度、溶媒、光、酸・塩基、ゲスト分子添加)に対応した膜厚・内部構造・形態変化や相転移などの動的挙動を調べる。すなわち、インターロック化合物の立体構造・化学特性の変化やゲスト分子との会合体形成を通じたミクロ情報が、球状微粒子のマクロ情報にどのように協同的に伝達・増幅されるか明らかにする。

  • 研究成果

    (13件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] One‐Step Synthesis of Cyclophanes as Crystalline Sponge and Their [2]Catenanes through SNAr Reactions2020

    • 著者名/発表者名
      Tominaga Masahide、Hyodo Tadashi、Maekawa Yumi、Kawahata Masatoshi、Yamaguchi Kentaro
    • 雑誌名

      Chemistry A European Journal

      巻: 26 ページ: 5157-5161

    • DOI

      10.1002/chem.201905854

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Co-Inclusion of cyclic ethers and chloroform by a macrocycle with benzophenone-3,3′,4,4′-tetracarboxylic diimide units2020

    • 著者名/発表者名
      Tominaga Masahide、Mizuno Kosuke、Yamamoto Haruka、Hyodo Tadashi、Yamaguchi Kentaro
    • 雑誌名

      CrystEngComm

      巻: 22 ページ: 2964-2969

    • DOI

      10.1039/d0ce00221f

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inclusion abilities towards hexyne isomers by co-crystallization with extended V-shaped host molecule2019

    • 著者名/発表者名
      Kawahata Masatoshi、Tominaga Masahide、Fujimaru Kousuke、Hyodo Tadashi、Yamaguchi Kentaro
    • 雑誌名

      Tetrahedron

      巻: 75 ページ: 130576

    • DOI

      10.1016/j.tet.2019.130576

    • 査読あり
  • [学会発表] アダマンタン部位をもつ環状ホスト分子によるキシレン異性体の包接結晶の作製と分離2020

    • 著者名/発表者名
      富永昌英・兵頭直・山口健太郎
    • 学会等名
      日本化学会第100春季年会
  • [学会発表] V型分子によるベンゾキノン誘導体の共結晶化とその結晶構造2020

    • 著者名/発表者名
      川幡正俊・富永昌英・小松亮太・兵頭直・山口健太郎
    • 学会等名
      日本化学会第100春季年会
  • [学会発表] V型非環状ホスト分子によるカルボラン包接結晶の作製と結晶構造解析2020

    • 著者名/発表者名
      小松亮太・川幡正俊・富永昌英・兵頭直・山口健太郎
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] 環状イミドを活用した六員環エーテルの包接と結晶構造解析2020

    • 著者名/発表者名
      水野皓介・富永昌英・兵頭直・山口健太郎
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] 環状イミドによる五員環エーテルの包接と結晶構造解析2020

    • 著者名/発表者名
      山本陽香・富永昌英・兵頭直・山口健太郎
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] 環状化合物の多孔質結晶による芳香族炭化水素の包接挙動解析2020

    • 著者名/発表者名
      兵頭直・川幡正俊・富永昌英・山口健太郎
    • 学会等名
      日本薬学会第140年会
  • [学会発表] 環状イミドを活用した環状エーテル化合物の包接と結晶構造解析2019

    • 著者名/発表者名
      富永昌英・水野皓介・山本陽香・兵頭直・山口健太郎
    • 学会等名
      第28回有機結晶シンポジウム
  • [学会発表] 環状化合物の多孔性結晶による緑の香り成分の包接と結晶構造解析2019

    • 著者名/発表者名
      兵頭直・富永昌英・川幡正俊・山口健太郎
    • 学会等名
      第28回有機結晶シンポジウム
  • [学会発表] V型分子を用いた脂肪族化合物の選択的共結晶化とその単結晶X線構造解析2019

    • 著者名/発表者名
      川幡正俊・富永昌英・藤丸滉輔・兵頭直・山口健太郎
    • 学会等名
      第28回有機結晶シンポジウム
  • [備考] 徳島文理大学香川薬学部解析化学講座ホームページ

    • URL

      http://kp.bunri-u.ac.jp/kph10/index.html

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公開日: 2021-01-27  

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