昨年度までに2次元超分子ポリマーのアスペクト比を制御するための分子設計指針を明らかにした。しかしながら、生成した2次元超分子ポリマー同士が重なり合って集積し、沈殿してしまった。このように「重合」中にポリマーが沈殿してしまうことは、高分子合成においてもしばしば遭遇する問題である。その解決法を確立することは本申請課題の範疇であると考え、研究を進めた。 具体的には、モノマー分子に溶解性を付与するために導入した長鎖アルキル基の長さを最適化することとした。これまでのモノマーでは没食子酸の3、4、5位にドデシル基導入した、いわゆる「くさび型分子」を用いていた。ここで、3位と5位のドデシル基はそのままに、4位にオクダデシル基を導入したくさび型分子を設計し、これをモノマー分子に修飾した。このような分子設計において、ドデシル基よりも長いオクタデシル基は2次元超分子ポリマーの面外に突き出すこととなり、2次元超分子ポリマー間の重なりを阻害すると期待した。 このようにして設計した新しいモノマーに対して、独自に確立したリビング超分子重合法を適用し、2次元超分子ポリマーの精密合成を試みた。その結果、面積とアスペクト比が制御された2次元超分子ポリマーを安定に溶液中に分散できることが示唆された。以上の分子設計コンセプトは非常にシンプルであるが、様々な超分子ポリマーに適用できると考えられる。
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