研究課題/領域番号 |
19K05596
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
野原 愼士 山梨大学, 大学院総合研究部, 准教授 (40326278)
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研究分担者 |
宮武 健治 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (50277761)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 電気化学キャパシタ / アニオン導電性高分子電解質膜 / 電気二重層キャパシタ / 活性炭電極 / 酸化マンガン系電極 |
研究実績の概要 |
アニオン導電性高分子膜(QPAF-4、膜厚52 μm)を合成し、2枚の活性炭電極で挟み込み、新規な固体高分子型電気二重層キャパシタ(EDLC)セルを組み立て、その電気化学特性を25℃で評価した。比較のために、1 M KOH 水溶液をアルカリ二次電池に用いられるポリオレフィン不織布セパレータ(膜厚120 μm)に含浸し、これを活性炭素電極で挟んだアルカリ水溶液型EDLCセルを組み立て、評価した。 その結果、QPAF-4膜を用いたセルではKOH水溶液を用いたものと同様にEDLC特有の長方形型のサイクリックボルタモグラムが観測された。また、定電流充放電試験においても、両方の電解質のセルともに直線的な充放電曲線が得られた。これらのことから、QPAF-4膜のEDLCへの良好な適用可能性が明らかとなった。その一方で、レート(高率充放電)特性を調べた結果、比較的小さな放電電流では両者は同様の放電容量を示したが、固体高分子型セルの方が放電電流の増加による放電容量の減少がより大きく、これはQPAF-4膜のイオン伝導率がKOH水溶液のものよりも劣ることに起因すると考えられる。 そこで、種々の膜厚のQPAF-4膜を合成し、レート特性を検討した結果、膜厚を12 μmまで薄くすることにより、高率放電における容量が水溶液型EDLCを大きく超えることが明らかとなった。これは、水溶液型セルの場合、微小短絡やシャトル反応等に起因する自己放電の影響により、これ以上電極間距離を小さくすることに限界があるが、機械的強度に優れた高分子膜を使用するで、電解質の薄層化が可能となり、レート特性の向上につながるといった今後の研究開発に向けた非常に重要な指針と可能性を示している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画の通り、アニオン導電性高分子膜と活性炭電極からなるEDLCセルを組み立て、キャパシタ特性を水溶液型セルと比較し、評価、検討することにより、そのセルの実現可能性を示すことができた。その上、従来盛んにEDLCに適用されてきた機械的強度の弱いゲル電解質とは異なり、自立膜として使用可能、薄層化が可能、さらには当初の予想を上回りレート特性が水溶液系よりも優れるセルを構築可能といった、本アニオン導電性高分子膜の優位性を見出すことができた。 放電容量、レート特性等の評価にはアクリル板で固定した簡易型セルを用いた。一方、初年度に当初予定していた自己放電特性、サイクル特性をより正確に評価するためには、アルカリ耐性のある密閉型コインセルを用いる必要があり、材質の検討、設計等に少し時間を要したが、現在はほぼ終了しているので、早急にこれらの特性評価を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
まず、密閉型コインセルを用いて、自己放電特性およびサイクル特性の評価を行う。また、R2年度の半ばまでを目途に予定にしている電極/電解質界面の最適化についても引き続き行っていく。活性炭電極内の活性炭素粉末と高分子電解質バインダーの組成等を検討することにより、良好なレート特性を有しつつ、自己放電に優れた電極構造を検討し、電極/電解質界面の最適化を行う。得られた知見をもとに、必要があれば高分子膜、バインダーの分子構造の再検討、合成、適用も行っていく。 上記の最適化を行った後、作動電圧およびエネルギー密度の大幅な拡大を目的とし、アニオン導電性高分子膜のハイブリッド(非対称)キャパシタへの応用を検討する。活性炭電極とレドックスキャパシタ用材料として有望な酸化マンガン電極を組み合わせ、アニオン導電性高分子膜を用いてキャパシタセルを組み立てる。このセルの特性評価およびセル構造の最適化により、新規全固体型2V級キャパシタの実現可能性について実証する。
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