研究課題/領域番号 |
19K05598
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鈴木 正浩 信州大学, 学術研究院繊維学系, 教授 (30334915)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超分子ハイドロゲル / L-アミノ酸 / 低分子ゲル化剤 |
研究実績の概要 |
本研究では、低分子ゲル化剤が形成する低分子ゲルの物性に及ぼす高分子化合物の効果について検討を行っている。本年度は、(1)より簡単に低分子ゲルを形成する方法の探究、(2)低分子ゲルの物性に影響する高分子の調査、および(3)高分子への低分子ゲル化剤の導入について検討を行った。(1)では、簡単な合成法で得られるL-リシン誘導体を用いて、カルシウムイオンを添加することで、室温で低分子ハイドロゲルを形成できることを見出した。これは、L-リシン誘導体の水溶液とカルシウムイオンを含む水溶液を混合するだけで低分子ハイドロゲルの形成が可能となるので、とても簡便な方法論を確立できた。他の、多価イオンの導入も視野に入れたさらなる検討が必要となった。(2)では、バイオマテリアルへの応用を考慮して、すでにバイオマテリアルとして使用されている種々の高分子の添加効果について検討したところ、いくつかの高分子を添加すると物性が向上することを見出した。特に、高分子の添加によって、より少ない濃度での低分子ゲルの作製に成功した。また、高分子の種類によって低分子ゲルの物性を向上させたり、逆に低下させたりすることができる。物理化学的な検討によって詳細が解明されると考えている。(3)では、高分子鎖へ導入する低分子ゲル化剤部位の数が高分子自体の物性を著しく変化させることを見出した。今回はイソシアネート基を用いた導入であったが、他の結合を検討する価値があることがわかった。また、高分子の分子量なども考慮した総合的な検討課題が見えてきた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度は、3つの課題について検討を行ってきたが、新しい低分子ゲルの作製方法についてはおおむね満足した結果が得られた。これは、加熱プロセスを経て低分子ゲルの作製が行われる通常の方法よりもより簡便に低分子ゲルを作製できるからである。一方、高分子の添加効果については、低分子ゲルの物性に影響するいくつかの高分子化合物の発見には成功したが、機器分析によるメカニズムの解明がやや遅れていると考えている。通常の低分子ゲルとは異なり、高分子を添加したゲルから、測定するサンプルの作製方法があまり確立されていなかったことが原因である。2020年度は、より良い分析用サンプルの作製のノウハウを極めつつ、機器分析測定およびその解析が必要となると考えている。高分子鎖への低分子ゲル化剤部位の導入については、過去の合成法を参考にイソシアネート基を用いて導入ができた。ただし、高分子に導入する本数によって、高分子の物性を著しく変化させることがわかった。また、高分子鎖との結合様式が影響していることも示唆された。その結果、最適の導入本数の確定や他の結合様式の検討が必要となった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題での今後の研究は計画書通りに推進する予定である。高分子を含む低分子ゲルの物性評価は、サンプル作製法の改善等で対応でき、高分子鎖への導入するための結合様式の探究についても計画書通りである。ただし、低分子ゲル部位の導入本数の最適化など、2019年度に達成できなかった課題も同時に進行する予定である。
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