研究課題/領域番号 |
19K05603
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
深江 亮平 兵庫県立大学, 環境人間学部, 教授 (90165241)
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研究分担者 |
川月 喜弘 兵庫県立大学, 工学研究科, 教授 (60271201)
近藤 瑞穂 兵庫県立大学, 工学研究科, 助教 (70447564)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 架橋液晶高分子 / N-ベンジリデンアニリン / フォトメカニカル効果 |
研究実績の概要 |
本年度はN-ベンジリデンアニリン(NBA)を光応答部位とする架橋液晶高分子フィルムのフォトメカニカル効果を向上させるため,一軸配向したフィルムを作製した。フィルム面内及び面外配向したフィルムを作成し,巨視的形状変化を観察したところ面内配向フィルムでは配向方向と平行に光源方向に向かって屈曲する一方、面外配向したフィルムは光源方向と反対方向に屈曲し,いずれのフィルムも光照射をやめると元の形状に戻った。また,光照射時の応力緩和および粘弾性変化を測定したところ,いずれのフィルムも光照射時に弾性率の低下が見られ,面内配向したフィルムでは収縮に伴う応力の増加が,面外配向したフィルムでは膨張に伴う応力の低下が観察された。これらの挙動はアゾベンゼンを光応答部位とする架橋液晶高分子フィルムと類似しており,NBAを光応答部位とする架橋液晶高分子フィルムでも,光異性化と,後続する配向変化によって巨視的な形状変化が誘起されていると考えられる。また,NBA部位の運動性の向上を目的として,一官能性のNBAをモノマーに導入したところ,フィルムの光照射に対する運動性が向上し,特に照射を中断した時の復元挙動が非常に大きくなることがわかった。これは光照射によるNBAの異性化が熱による戻り異性化と競合し,シス体の濃度の増加が緩やかであるのに対し,照射を中断した時の戻り異性化が一方的であることを示唆している。この性質を利用し,フィルムをリング状に成形して一方向から光照射することにより,自発的な転倒挙動を誘起できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
N-ベンジリデンアニリンの配向制御ではシランカップリングを用いた配向制御が困難であり,垂直配向用ポリイミドを用いて配向制御を行った。また,復元の速さが大幅に向上したことは予想を超える成果であり,今後の発展が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
反応性メソゲンの効率的な導入を目的として末端にアルデヒドもしくはアミンを導入した一軸配向性の架橋液晶高分子をテンプレート重合を用いて作製する。また,レーザー変位計を用いた阻止力測定により,フォトメカニカル効果を効率的に測定する方法についても検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
目的物質の合成に予想以上の時間を必要としたために、今年度物性の測定に用いる物品の購入の必要がなかったため。
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