研究課題/領域番号 |
19K05604
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
藤田 正博 上智大学, 理工学部, 教授 (50433793)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 固体電解質 / 柔粘性結晶 / イオン伝導性高分子 / リチウムイオン電池 |
研究実績の概要 |
本研究では、高イオン伝導性柔粘性結晶を開発するため、最適な分子構造をデザインするための明確な指針を得ることを目的とした。それらの指針を最大限活用し,従来系を凌駕する固体電解質材料の開発へとつなげる。報告例は少ないながらも柔粘性結晶相における結晶構造は、NaCl型(配位数6)やCsCl型(配位数8)が多いことに着目した。イオン結晶の結晶構造は、カチオンとアニオンのイオン半径比でおおよそ決まるため、カチオンとアニオンのイオン半径比から候補を絞り、新規有機イオン性柔粘性結晶(OIPC)を合成した。イオン半径比の範囲は0.80から1.0であり、CsCl型の結晶構造に分類されることが示唆された。10種のピロリジニウム塩を合成し、インピーダンス測定を行うことで、イオン伝導度を測定した。イオン半径比が0.80から1.0の範囲において、ピロリジニウム塩のイオン伝導度は、イオン半径比の減少とともに増加した。これは、カチオンとアニオンのイオン半径の差が大きくなることで、結晶中に大きな空隙が生じやすくなり、その結果、空隙中をイオンが伝導しやすくなることに基づくと推察される。しかし、上記の相関から逸れるOIPCもあった。イオン半径比の減少は、結晶構造がNaCl型へ近づくことを意味しており、今後、イオン半径比の範囲をさらに拡大して、結晶構造とイオン伝導度との相関についても検証を行う予定である。今回得られた分子設計指針は、OIPCの物性を高い精度で予測できることを示唆するものであり、意義深い成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
高イオン伝導性OIPCを開発するため、10種類のピロリジニウム塩を合成した。諸特性に及ぼすカチオンのアルキル側鎖長、アニオン構造の効果を詳細に検討するため、それらピロリジニウム塩の熱分析、インピーダンス測定、X線回折測定、固体NMR測定を行い、基礎物性を集積した。これら一連の測定結果から、OIPCを構成するカチオンおよびアニオンのイオン半径比と物性に相関のあることを見出した。OIPCとポリエーテルの複合体を作製し、それらの基礎物性を評価する計画であった。マトリックスとなるポリエーテル誘導体の合成に時間を要したため、計画よりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
開発した高イオン伝導性OIPCに種々のリチウム塩を添加し、リチウムイオン伝導性を評価する。添加するリチウム塩の種類、濃度を変えて、熱分析、インピーダンス測定、X線回折測定、固体NMR測定を行い、基礎物性を集積することで、条件の最適化を行う。それらOIPCとポリエーテルの複合体を作製し、リチウムイオン伝導性に優れた固体電解質を開発する。時間を要したものの、マトリックスとなるポリエーテル誘導体の合成が確立できた。今後は、OIPCとポリエーテル誘導体の混合手法、混合比を変えてイオン伝導性の最適化を迅速に行う。さらに、市販のポリエーテルもマトリックスとして用いて、上記の条件最適化を平行して進めることで、本研究を加速する。
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