研究課題/領域番号 |
19K05604
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
藤田 正博 上智大学, 理工学部, 教授 (50433793)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 固体電解質 / 柔粘性結晶 / イオン伝導性高分子 / リチウムイオン電池 |
研究実績の概要 |
本研究では、柔粘性イオン結晶/Li塩複合体へポリエーテル誘導体を添加し、高イオン伝導性と機械的強度を両立した固体電解質材料を開発することを目的とした。それら3成分系複合体の諸特性を評価した。柔粘性イオン結晶に5 mol%のLi塩を添加した複合体(OIPC/Li)に対し、10~50 wt%のポリエーテル誘導体を添加した。いずれの添加量においても、それら複合体はフィルム形成能を有していることがわかった。特に、ポリエーテル誘導体の添加量が30 wt%以上のとき、伸縮性のある高強度の膜を得ることができた。3成分系複合体の熱分析を行った結果、ポリエーテル誘導体が30 wt%以下のとき、OIPC/Liに基づく相転移が観測された。ポリエーテル誘導体の添加量が40 wt%以上のとき、ポリエーテル誘導体のガラス転移温度が観測された。OIPC/Liのイオン伝導度に及ぼすポリエーテルの添加効果を検討した。ポリエーテル誘導体が20 wt%以下のとき、3成分系複合体のイオン伝導度は、OIPC/Liよりも低下した。その後、ポリエーテル誘導体の添加量の増加に伴いイオン伝導度が向上し、40 wt%のとき最大値を示した。イオン伝導度に及ぼすポリエーテル誘導体の濃度依存性は、従来系とは異なる特異的な挙動であった。3成分系複合体(ポリエーテル誘導体40 wt%)の電気化学安定性を調べた結果、電位窓は約5.5 V vs. Li/Li+であった。Liイオン電池用電解質として応用するために十分な電気化学的安定性を有することがわかった。ポリエーテル誘導体は耐酸化性に乏しいことが知られており、OIPC/Liと複合化することで、酸化安定が向上することがわかった。これらの結果から、OIPC/Li複合体にポリエーテル誘導体を添加することで、高イオン伝導性と機械的強度を兼ね備えた固体電解質を開発できることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
柔粘性イオン結晶としてピロリジニウム塩を合成した。所定量のLi塩を添加した複合体を作製し、それら複合体にポリエーテル誘導体を添加した。諸特性に及ぼすポリエーテル誘導体の効果を詳細に検討するため、それら3成分系複合体の熱分析、インピーダンス測定、電気化学測定を行い、基礎物性を集積した。OIPC/Liにポリエーテル誘導体を添加することで、イオン伝導性が向上した。さらに、自立膜を得ることができた。OIPCとポリエーテルの複合体を作製し、計画に沿って研究を進めることができ、本研究はおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
開発した高イオン伝導性固体電解質を用いてリチウムイオン電池の作製と評価を行う。それらと平行して、リチウムイオン伝導性の評価を進め、イオン伝導機構を解明する。それらの知見に基づいて、従来系を凌駕する固体電解質の開発を行う。具体的には、添加するリチウム塩の種類や濃度を変えて、熱分析、インピーダンス測定、X線回折測定、NMR測定を行い、基礎物性を集積することで、条件の最適化を行う。さらに、リチウムイオン伝導性に優れるポリカーボネートもマトリックスとして用いて、ポリエーテル系と同様に複合体の作製と評価を進めることで、本研究を加速する。
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