研究課題/領域番号 |
19K05605
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
籔内 一博 中部大学, 工学部, 准教授 (80389155)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超分子ゲル / 自己組織化 / クマリン / 光二量化 |
研究実績の概要 |
超分子ゲル構造の可逆的固定化を目指し、本年度は、可逆的な光二量化反応を示すクマリン部位を導入した脂肪族アミンと酒石酸の複合化により得られる2成分系ゲル化剤分子を開発し、これらを用いて得られるゲルの特性および光応答性の評価を行った。 末端にクマリン部位を導入したアルキルアミンを新たに合成し、酒石酸およびジベンゾイル酒石酸との複合化(複合化比率1:1または1:2)を行った。得られた複合体のゲル化特性を調べたところ、1:1複合体がジクロロメタンやクロロホルムなど塩素系溶媒をゲル化することを明らかにした。いずれのゲルも透明度が高く、光照射実験に適するものであり、これらのゲルについて、キセノン光源を用いて紫外光照射(波長 > 300 nm)を行ったところ、光照射に伴うクマリン部位の二量化とともに、ゲル-ゾル転移温度の上昇や機械強度の向上など超分子ゲル構造の安定化が見られた。その後の短波長(波長 < 300 nm)の紫外光照射では、クマリン部位が単量体に戻ることによる熱安定性や機械強度の低下が予想されたが、ゲル-ゾル転移温度はさらに上昇し、機械強度はほとんど変わらなかった。この時、単量体への戻りがほとんど起こっていないことも分かった。この原因については、現在検討中である。また、これまでゲル化特性を示したものは、上述の通りいずれも1:1複合体であり、ゲル化剤1分子あたりクマリン部位が1つ導入されたものである。このため、分子間での二量体形成は高分子化には至らず、単なる二量化にとどまるが、ゲル構造の安定化の効果が現れたことになる。一方、ゲル化せず溶液であった試料についても光照射により粘性の上昇や固体の析出などが見られ、クマリン部位の二量化がゲル化剤分子の集合状態に影響を与えていると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
光照射により超分子ゲル構造の安定化を示す2成分系ゲル化剤の系を見出すことができた。しかしながら、研究代表者が2019年10月から12月にかけて約2か月半病気入院し、その間の研究遂行に支障が出たため、高分子化に必要な複合化比率でのゲル形成や可逆性に課題が残されている。
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今後の研究の推進方策 |
超分子ゲル構造の安定化効果が現れた系については、実験系の確認も含め可逆性の検討を進める。また、光照射により高分子化が起こることが期待される1:2の複合化比率で良好なゲル化特性を示す2成分系の探索を行う。さらに、クマリン部位を含まないアルキルアミンを用いてクマリン部位の濃度を調節した3成分系ゲル化剤の開発や、非ゲル化成分である架橋剤を添加することにより、ゲル構造の可逆的固定化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年10月~12月にかけて研究代表者が病気入院し、その間の研究遂行が滞ったため、消耗品の購入量、外部機関への分析依頼料および旅費が当初の計画より減少した。次年度使用額は、今年度実施できなかった分の消耗品購入や分析依頼料に充てるとともに、バイアルスターラーの導入など実験のさらなる効率化のために使用する。
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