研究課題/領域番号 |
19K05609
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
朝倉 哲郎 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (30139208)
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研究分担者 |
田中 綾 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70334480)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 絹人工血管 / 高機能化絹 / 絹多孔質コーティング / ダブルラッセル編み / 動物移植評価実験 / 動脈・静脈用絹人工血管 |
研究実績の概要 |
ダブルラッセル編みにて作製した絹人工血管を、ラット静脈に移植し、その性能を評価した所、静脈においても動脈同様に、絹人工血管は優れていることを報告した(Sci.rep., 2020,10,21041.)。一方、ダブルラッセル編みにて作製したポリエステル人工血管に、絹をスポンジ状にコートして、ラット動脈に移植、その性能を評価した所、市販品の作製法に比べて、より優れた移植結果を得ることができた(Organogenesis,2020,16,1-13.)。さらに、固体NMRと安定同位体ラベルモデル化合物を組み合わせて、家蚕絹繊維の主構造が8残基で1ターンするラメラ構造であることを明らかにし、これまでの絹繊維の構造モデルの定説を大幅に修正、今後の絹研究に大きなインパクトを与えることができた。それ以外に、絹をマグネシウムステントにコーティングし、良好なステントを作成できること、クモ糸の詳細な構造を、固体NMRと安定同位体ラベルモデル化合物、さらに分子動力学計算を組み合わせて明らかにしき、バイオ材料として今後、クモ糸素材を使用する際の基礎データを蓄積した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要で記述したように、多くの優れた結果を得ている。 (1)従来、絹人工血管を、ラットやイヌの動脈に移植して良好な結果を得てきたが、今回、ラット静脈に移植しても良好な結果が得られることがわかり、臨床での絹人工血管の使用分野を広げることができた。 (2)一方、市販の人工血管素材を用い、コーテング部分をゼラチンから絹に代えることによって、より高い性能の人工血管を作製することができた。 (3)家蚕絹の応用研究の基盤となる、その繊維構造について、半世紀以上前から教科書に引用され、定説になっていた構造が、間違っていることを明らかにした。これによって、今後の新たな絹研究の基盤を作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後はさらに絹人工血管のイヌ静脈への移植やコーテング部分の改良等の検討を行うとともに、絹人工血管の市販化に向けてバイオ関連の企業と共同研究を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
試料管等のNMR関連の予算が余るとともに、絹人工血管作製用の試薬の購入を抑えることができた。 今年度の配分額は少ないので、この余りの予算(787,408円)について、以下の使用計画をたてた。 ・NMR装置修理代 200,000 円 ・非常勤研究員人件費 300,000円 ・人工血管作製用部品代 200,000円・薬品代 20,000円 ・事務経費 67,408円
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