研究課題/領域番号 |
19K05610
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研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
竹中 克彦 長岡技術科学大学, 工学研究科, 教授 (30188205)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アクリルゴム / アクリル酸エチル / アクリル酸オクチル / アクリル酸ステアリル / 結晶性 / 乳化重合 |
研究実績の概要 |
アクリルゴムは、耐熱性、耐油性、耐候性や耐オゾン性などに優れた極性の合成ゴムであるが、耐熱性の向上が喫緊の課題となっている。本研究では現行市販品からの耐熱温度10℃アップを目標に、1)結晶性を有する成分の導入による効果的な相分離構造の形成とその構造内架橋 2)共重合制御を用いた架橋点間分子量の均一化 という観点からアクリルゴムの性能向上を目指す。具体的には、1)については重合性の低い1,2-二置換二重結合と結晶性を有する長鎖アルケニルアルコールのアクリル酸エステル(長鎖アルケニルアクリレート)と短鎖アクリル酸エステル(アクリル酸エチル)の共重合により、結晶性成分を導入したポリマーを合成する。結晶性の成分は加熱された時に融解するが、その融解熱のためにゴム全体の温度上昇を緩和することができ、分解温度に達するのを防ぐことに寄与する。また、結晶性成分鎖は非晶性部分と相分離することが考えられるので、その相内で側鎖中の二重結合部分を架橋させることにより、熱分解による分子量の低下を防ぎ物性低下を抑制する。2)については容易に架橋点となるような構造を有するアクリル酸エステルをコモノマーとして用いて共重合を行い、モノマー反応性比が近いことを利用して架橋点の均一化を図る。本年度は、項目1)について、適切な結晶性モノマーの選択と共重合の手法について検討し、モデル化合物としてアクリル酸ステアリルをコモノマーとしてその合成、適切な重合法の確立をめざした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
アクリルゴムが有するゴム弾性や耐油性などを損なうこと無く使用することのできる結晶性成分鎖を探索するため、飽和アルキル基であるオクチル基(C8H17-)およびステアリル基(C18H37-)を有するアクリル酸エステルを合成し、アクリル酸エチルとの乳化共重合を行った。アクリル酸オクチルの場合は乳化剤や連鎖移動剤などをの乳液にモノマー混合物(アクリル酸エチルとアクリル酸オクチルの混合物)と過硫酸カリウムの水溶液を全量の1/4ずつ加えて加熱する方法(連続法と略す)により、高収率で所定の組成を有する共重合体が得られた。生成したコポリマーにはガラス転移温度が一つだけ観測され、その値はアクリル酸オクチルの含量が増えるに従って(0mol%→-19℃、14mol%→-29℃、19mol%→ -34℃)低下した。しかしながら、最もオクチルエステル含量の多い共重合体でもDSCサーモグラムには融点に相当するピークは見られなかった。 アルキル鎖長の長いアクリル酸ステアリルを用いた場合には、アクリル酸オクチルの場合と同様な手法で重合を行うとアクリル酸ステアリルの単独重合体あるいはモノマーがポリマー中に残存してしまった。そこで補助乳化剤としてメチルβシクロデキストリンを用い、さらに事前に全てのモノマーを乳液中に投入して所定の時間攪拌して十分に乳化させ、そこに開始剤量液を適宜滴下しながら重合を行うことで共重合体を得ることができた。共重合体中のアクリル酸ステアリルの組成が20mol%程度になると共重合体のガラス転移温度は-10℃程度まで上昇したが、それと同時に30~40℃付近に側鎖の結晶によると思われる融点が観測されるようになり、結晶性成分を有するアクリルゴムが合成できる目安となった。
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今後の研究の推進方策 |
新たなモノマーとして1,2-二置換の炭素炭素二重結合を有する側鎖を持ったモノマーを合成する。炭素数はC18個程度を基準とし、共重合体中の組成は20mol%を目安にして共重合を行う。 本課題を研究テーマとしていた大学院博士後期課程の学生(研究補助者として雇用予定だった学生)が、コロナウィルス感染症対策のために帰省先(中国)から再入国できずにいるため、現在研究が一時中断している。再来日でき次第、研究を再開する予定である。
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