本研究ではバイオマスであるフェルラ酸を原料として調製できる表面に凹凸をもつ球状微粒子の形態制御を目的としている。申請段階での実施計画では、最終年度として、収率の向上や調整した微粒子を添加剤として用いた際の特性評価を挙げていたが、コロナの関係で実験期間が制限されていたこともあり、特性評価に関する知見の取得まで到達することはできなかった。しかしながら、収率の向上に向けた重合条件の検討中に、濃度の観点からディンプル形状との関係性ならびに表面に凹凸をもつ微粒子が調製可能な濃度範囲を明らかにした。また、その範囲内で値としては大きくないものの反応メカニズムから想定される収率の向上が確認できた。また、実施計画には入っていなかったが、重合の際の外的刺激として光照射し、微粒子の形態形成への影響についても評価した。その結果、粒径の増加および微粒子表面に形成されるくぼみの数が増加することが分かった。これは光照射により溶液中のモノマーおよびオリゴマーの多くが異性化し、それにともなってオリゴマー結晶の再溶解が促進され、また、異性化することで結晶性が低下したオリゴマー微粒子が合一することによるものだと考えられる。詳細は未解明ではあるもののディンプル型微粒子の形態制御に関する可能性が示唆された。以上のことから、表面に凹凸をもつディンプル型微粒子の形態制御を達成することができたといえる。添加剤とした際の特性変化の評価については今後の検討課題とする。
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