研究課題/領域番号 |
19K05619
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
上村 忍 香川大学, 創造工学部, 准教授 (60423498)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 窒化炭素 / ナノシート |
研究実績の概要 |
本研究課題では,分離膜を指向した光触媒能を有する窒化炭素系高分子ナノシートの作製を目指し,当該年度においては,光触媒能を有する物質である窒化炭素のナノシートの単離回収法の検討,不溶性である窒化炭素の構造制御を目指した難溶性メレム(窒化炭素の構成分子)へのソフトセグメントの導入(可溶性窒化炭素モノマーの合成)を試みた. 窒化炭素ナノシートの単離においては,酸溶液中での高温処理によるプロトン化による静電反発を利用したナノシート化を試みた.しかしながら,十分にプロトン化した状況においても,一次元的に成長した部分を有する窒化炭素は二次元構造を維持することが困難であり,AFM観察においても凝集体しか観察されない状況であった.しかしながら,上記プロトン化窒化炭素を十分に水溶液中に分散後,遠心分離により凝集体を除去した結果,長方形の形状のナノシートを得ることに成功した.ナノシート分散溶液は比較的安定であったものの,時間とともにナノシートが集合しやすい状況であることも確認した.このことから現在さらなる大面積化及び単離ナノシートの安定な分散状態を得るための条件を精査している. またメレムへのソフトセグメント導入を試み,C3~C10までのアルケニル鎖の修飾に成功,生成できたものはC5以上の鎖長の化合物であった.また収量はC5化合物が最も高いことを確認した.本研究での収率は約20%であり,既報のメレムへの化学修飾の収率(約10%)よりも高いことを確認した.また,イミンカップリングによるメレムへの化学修飾も試み,わずかながら反応が進行していることを確認した.これら化学修飾により得られた化合物を用い,ナノシート構築可能な重合法などを検討している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
窒化炭素ナノシートの単離に関して,ほぼ単層での回収が可能となっているものの,目標である大面積化(数十μmサイズ)には至っていない.本課題に関しては2年目にも実施する予定であることから順調であると判断した. またメレムへのソフトセグメント導入に関しては,導入したアルケニル鎖長による収量への影響を見出し,既報よりも高い収率で回収できることを確認できている.しかしながら,鎖長が短いほど比較的低分子量であることから導入本数の異なる分子の単離には至っていない.このことから,メレムのアミノ基すべてにアルケニル鎖を導入する反応条件の精査を現在実施している.またイミンカップリングでの導入も可能であることを見出したことから,相対的におおむね順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
窒化炭素ナノシートの大面積化は,最初の合成時の反応条件を検討することにより実施する.現在までの合成条件からより高温での作製が大面積化に適切であることを確認している.また単離に関しては,プロトン化窒化炭素と溶液中に溶解しているイオンにより集合体形成しやすいことが示唆されていることから,無機ナノシートの単離で利用されている界面活性剤などの利用を試みることを検討している. またソフトセグメント導入ヘプタジン化合物に関しては,ネットワーク化(高分子化)を試み,二次元ナノシートを目指す.現在導入が確認されたアルケニル鎖に関しては金属触媒が必要であるため,金属触媒とヘプタジン環(メレム)との相互作用による反応への影響が示唆される.このため,金属触媒を利用しないソフトセグメントの導入と重合法を検討する必要がある.金属触媒を利用しない反応を見出せない場合は,ヘプタジン環との金属錯体を構築する条件を見出し,多孔性ナノシートの構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
発表を検討していた学会(高分子年次大会)に参加できなかったことから旅費の支出が予定よりも減少した.また次年度12月開催の国際学会での招待講演が決まったことから,海外出張費が必要となったことから,次年度へ繰り越す予定である.
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