研究課題/領域番号 |
19K05621
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
有光 晃二 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 教授 (30293054)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸増殖剤 / 酸増殖反応 / 塩基増殖剤 / 塩基増殖反応 / 自己触媒反応 |
研究実績の概要 |
2019年度はまず超強酸を発生する酸増殖剤として、3-クロロプロピオフェノンを出発原料として4ステップで目的化合物1を合成した。次にこの化合物1を70 mmol/l、p-トルエンスルホン酸(TsOH)を0または7 mmol/l含む重アセトニトリル溶液を調製し、これをNMRチューブに入れて封管した上で100 oCで加熱した後、1H-NMRスペクトルを測定することで化合物1の熱分解挙動を調べた。その結果、あらかじめ酸を添加した系では速やかに分解し、添加していない系では一定の誘導期間の後に非線形に分解した。これは、系中に存在する微量の酸により化合物1が自己触媒的に分解し、新たな超強酸HPF6が発生する酸増殖反応が起こったためであると考えられる。このことから、目的とする酸増殖剤の合成に成功した。
2020年度は、塩基増殖剤については、前駆体であるカルボン酸を合成し、対応する塩基と混合することで目的物2を得た。 目的化合物2を69 mmol/l、対応する強塩基を13 mmol/l含む重THF溶液を50 oCで所定時間加熱し、1H-NMRスペクトルを測定することにより化合物2の分解反応を追跡した。その結果、あらかじめ塩基を添加した系では化合物2は速やかに分解して新たな強塩基を定量的に生成し、塩基を添加しない系では誘導期間の後、自己触媒反応特有の非線形な曲線を描き強塩基が定量的に生成した。これにより、化合物2が強塩基を連鎖的に発生する新規な塩基増殖剤であることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、2020年までに目的とする酸増殖剤を合成し、溶液中での分解挙動を確認することになっていたが、酸増殖剤の探索を集中して実施したこともあり、2019年度中にこれを達成することができた。 塩基増殖剤も2020年度までに目的化合物を合成し、溶液中での分解挙動を評価することになっていた。こちらは、初年度は酸増殖剤の設計合成に集中したため合成が遅れたが、2020年度のうちに合成が完了し、溶液中での分解挙動を調べることができた。 したがって、計画書で予定していた2020年度末までに、酸増殖剤と塩基増殖剤の合成および分解挙動を明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、得られた酸増殖剤および塩基増殖剤をカチオンUV硬化材料およびアニオンUV硬化材料に組み込んで、硬化性能の向上がみられるかどうか検証する予定である。
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