研究課題
アセン、ポルフィリンに代表されるπ共役系化合物は、π-πスタッキングなどの強固な分子間相互作用を示すため、有機薄膜トランジスタ(OTFT)や有機太陽電池(OSC)などへの応用が期待され、活発に研究が行われてきた。一方、π曲面を有する化合物が、近年盛んに報告されている。フラーレン(C60)やカーボンナノチューブに代表される、π曲面を持つ分子はπ曲面の内側と外側で異なる電子物性を示すなど、有機エレクトロニクスや生化学分野など幅広い分野で研究が展開されている。しかし、曲面や環状構造を持つ分子の合成法は限られており、新しい合成法の確立が求められている。ポルフィリン(2.1.2.1)は、2つのπ屈曲面をもつダブルV字型構造を持つ化合物である。これまでに、ポルフィリン(2.1.2.1)をビルディングブロックとして環状ポルフィリン多量体の合成を試み、2種類の環状ポルフィリン多量体の合成に成功し、報告してきた。また、フラーレンとの相互作用を検証した結果、多量体を形成するときのポルフィリン(2.1.2.1)の曲面の向きや架橋構造によって、フラーレンの包摂錯体形成能に違いが現れることを明らかにした。本年度では、環状ポルフィリン多量体合成への応用を志向して、ジピロロリルマレイミドおよびジピロロリルフタルイミドを用いたポルフィリン(2.1.2.1)の合成検討を行った。その結果、ジピロロリルマレイミドからはマレイミドの強い電子求引性によってポルフィリン(2.1.2.1)を合成することはできなかったが、新規蛍光性材料を副生成物として得ることができた。また、ジピロロリルフタルイミドとアセトンからカリックスピロールを合成することに成功し、環状ポルフィリン多量体だけではなく環状カリックスピロール多量体の合成の可能性を示すことにも成功した。
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