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2020 年度 実施状況報告書

新規な液晶性化合物:カラミチックーディスコチック双液晶性における相転移メカニズム

研究課題

研究課題/領域番号 19K05630
研究機関奈良先端科学技術大学院大学

研究代表者

清水 洋  奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任教授 (40357223)

研究分担者 河合 壯  奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 教授 (40221197)
内田 欣吾  龍谷大学, 理工学部, 教授 (70213436)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードπーπ相互作用 / 異方的分子間力 / カラムナー相 / スメクチック相 / 双液晶性
研究実績の概要

令和元年度は世界初のカラミチック液晶性とディスコチック液晶性を単一化合物種で示すトリフェニレンのヘキサテトラデシロキシアゾベンゼンエステル誘導体についてSmA相とColr相間の相転移メカニズムの概要を明らかにしたが、令和2年度は引き続きそのアルキル同族体についても高輝度X線散乱測定により得られた配向試料に関するデータをもとに考察を行い、スメクチック層状構造形成を担うアルコキシアゾベンゼンユニットとカラム構造形成を担うトリフェニレンユニットのそれぞれ分子間相互作用がアルキル鎖長により影響を受けることを明らかにできた。この間、目的化合物の合成中間体であるアゾベンゼン誘導体が極微量存在するだけで(元素分析やNMRスペクトルでは問題ないと判断される精製度のもの)Sm相の形成に大きな影響を及ぼすことが見出され、最終合成物であるエステルのアルキル同族体のさらなる精製を重ね、化合物本来の液晶相転移の観察を可能にした。一方、等温光相転移についても紫外光照射下GI-SAXS法により配向試料の各相の分子配向状態に関するデータを得ることができた。光照射によりアゾベンゼンユニットがtrans-cis異性化を生じることによりスメクチック層状構造において層間周期が変化することが判明、このことが光照射下でのSm相の熱的不安定下の要因であることが示唆された。また、エステル結合をエーテル結合に変えた誘導体の液晶相転移についても配向試料に対して高輝度X線散乱による液晶構造の解明を試み、より屈曲性に富むエーテル結合により、現れる液晶相が多様化すること及び双液晶性の逆転現象が起こる可能性が示唆される結果を得た。本年度の研究成果として重要であるのは従来無視してきたレベルの不純物混入がカラミチックーディスコチック双液晶性ではドラスチックに相転移現象に絡むということで、従来の感覚を越える状況がありうることが見出された点にある。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍にあって分担研究者との対面打合せが遠のいたこと、本研究に関係する学生諸君の実験、討論における動態にも変化が見られ平素の研究実施ペースは鈍化せざるを得なかった。このような状況の中でも今後に着実に影響を与える有益な結果をえることができた。例えば、アルキル同族体では単素数が11から16を合成し、それぞれが冷却時に現れる液晶相としてSmA相があると結論付けたもの(元素分析やNMRのレベルでは精製度に問題なしと判断された試料)の中に1H-NMRスペクトル上で無視しうるレベルの化合物本来のシグナルの近傍に現れる微弱シグナルの有無がこのSmA相の形成に影響を与えることが判明した。合成中間体であるアゾベンゼン誘導体や化学構造上それに類似で相転移にSmA相の発現が見られる誘導体等との2成分系相図を作成、相転移挙動を検討したところ極々微量の合成中間体アゾベンゼンの混入がSmA相の安定性を極度に向上させエナンチオトロピックな液晶相として安定に発現することが明らかになった。このことから、それまでの合成物について全て精製とNMRによる純度再チェックを余儀なくされ随分と時間を費やす結果となったがこの双液晶性がかなり精緻な状況の中で起こる相転移であることを示唆する結果であり、今後のメカニズム解明に大きなヒントを与えるものと考えている。

今後の研究の推進方策

コロナ禍の状況にも影響を受けると思われるが、エステル誘導体については、カラミチック液晶相とディスコチックカラムナー液晶相間の相転移について包括的な考察を行い、双液晶性の本質の解明を目指す。また、エステル結合をエーテル結合に変えた同様の化合物に関してもアルキル同族体の液晶性の全貌を明らかにし、カラミチックーディスコチック双液晶性という新たな液晶性化合物におけるカラミチック液晶性ユニットとディスコチック液晶性ユニットのそれぞれの相互作用の変化と相転移の関係を考察し、双液晶性発現の分子設計手法を確立する。加えて、等温光誘起相転移の実態を明らかにし、熱相転移との差異を考察、光応答性材料としての可能性を解明する。

次年度使用額が生じた理由

令和2年度は、コロナ禍で参加、成果発表予定の国際会議が延期となったほか、国内学会等もオンラインに切り替えての開催になるなどしたことから旅費支出が抑制された。また、研究補助員の確保もコロナ禍で実働性が乏しいとの判断から雇用を見送った。延期された国際会議が次年度に開催されれば参加するとともにコロナ禍の推移次第だが実験補助員の雇用により研究を加速したい。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件)

  • [国際共同研究] ストラスブール材料物理・化学研究所(フランス)

    • 国名
      フランス
    • 外国機関名
      ストラスブール材料物理・化学研究所
  • [雑誌論文] 棒状と円盤状の分子形態をもつ液晶分子の熱および光相転移の解析2021

    • 著者名/発表者名
      内田欣吾、松本宏紀、西村裕行、川原直樹、北川剛史、真田ひかる、中村啓人、太田 昇、清水 洋
    • 雑誌名

      SPring-8/SACLA利用研究成果集

      巻: Section A ページ: 40-44

    • DOI

      10.18957/rr.9.1.40

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] カラミチックーディスコチック双液晶性アルコキシアゾベンゼン ートリフェニレンエステル結合体のSm-Col 液晶相転移~異方性 分子間相互作用の効果~2021

    • 著者名/発表者名
      真田ひかる、中村啓人、北川剛史、田中 大介、太田 昇、関口博史、河合 壮、内田欣吾、清水 洋
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会(オンライン)
  • [学会発表] トリフェニレン ―アルコキシアゾベンゼンエーテル結合体の液晶相転移挙動2021

    • 著者名/発表者名
      北川 剛史、真田 ひかる、中村 啓人、太田 昇、関口 博史、服部 陽平、河合 壯、内田欣吾、清水 洋
    • 学会等名
      日本化学会第101春季年会(オンライン)
  • [学会発表] カラミチックーディスコチック双液晶性アルコキシアゾベンゼンートリフェニレンエステル 結合体のSmA-Colr 液晶相転移 ~異方性分子間相互作用の効果~2020

    • 著者名/発表者名
      真田ひかる、中村啓人、北川剛史、田中大介、太田昇、関口博史、河合 壮、内田欣吾、清水 洋
    • 学会等名
      日本液晶学会オンライン研究発表会
  • [学会発表] トリフェニレン ―アルコキシアゾベンゼンエーテル結合体の液晶相転移挙動2020

    • 著者名/発表者名
      北川 剛史、真田 ひかる、中村 啓人、太田 昇、関口 博史、服部 陽平、河合 壯、内田 欣吾、清水 洋
    • 学会等名
      日本液晶学会オンライン研究発表会

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公開日: 2021-12-27  

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