TiPc2において、D2およびD4d対称構造をつなぐ熱的異性化反応では、まずD2対称構造中の二つのPc環をつなぐC-C σ結合の一つが切断されるTSが得られた。しかし、このTSから得られる生成物は、D2対称構造のC-C σ結合が一つだけ残ったC2対称構造の生成物となること、C2対称構造の方が不安定であることがわかった。 光誘起異性化反応による異性化では、ほぼC2対称のようなC1構造とD4d対称構造が得られた。二種類の励起状態構造の相対エネルギーから、励起状態ではD4d対称構造の方が安定であることがわかった。つまり、基底状態と励起状態では二つの対称構造の安定性が入れ替わることが明らかとなった。
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