研究課題/領域番号 |
19K05632
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
小簑 剛 兵庫県立大学, 物質理学研究科, 准教授 (20547301)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 量子状態制御 / 表面プラズモン / MEMS / 分散関係計測 / 波動光学シミュレーション |
研究実績の概要 |
光学的な分散関係を調査する計測器系を開発した。試料への光照射について、入射角と入射光強度を機械的に調整する制御プログラムも併せて作成した。透過光強度は液体窒素冷却型CCDを用いてスペクトルを計測する仕様とした。さらに、試料への光照射部を確認するために、長作動レンズ付きCCDを試料部に置き、リアルタイムで試料に照射される励起光スポットを確認できる工夫を講じた。この測定系を利用して有機薄膜からの発光における分散関係を計測した。計測したデータは、Mathematica (登録) を利用して自作したプログラムを用いて解析し、装置の妥当性を確認した。さらに、独自の蛍光顕微鏡を作製した。ワークスペースの広いOlympus社製の顕微鏡 (絶版) をベースに用い、任意の強度で試料に励起光を照射できる仕様とした。入射光強度は自動制御が可能な測定プログラムを作成した。入射光強度はリアルタイムでモニタすることが出来る。マイクロメートルスケールで鮮明に撮像するために、Olympus社製DF-74型CCDカメラを取り付けた。また、鏡筒内の光軸を簡単に変更し、発光スペクトルおよび透過スペクトルの測定が行える仕様とした。スペクトルの測定系は、分散関係測定系と共用である。鏡筒に備えられてアパーチャーにより、フィルター・絞りを調節しつつ測定することができる。蛍光性分子の薄膜を用いて蛍光顕微鏡によるスペクトル測定を行ったところ、入射光強度の増大に伴う自然放射光の増幅を観測し、装置が問題なく機能することを確認した。さらに、市販の光学ソフトウェアの立上、解析および測定用PCのネットワーク構築を行い、光学実験用のプラットフォームを独自に開発した。研究に用いる試料の作製方法も検討したが、試行を重ねた結果、MEMSの利用が現実的との感触を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画では装置作製に比重を置いており、装置は、当初計画を超えて多機能の装置を作製することができた。特に、蛍光顕微鏡は、当初計画には含まれなかった装置である。当初、光学分散関係測定系を利用してスペクトルの先鋭化を確認するのでも問題ないと考えていた。しかし、マイクロメートルスケールの試料において、どの部分で発光しているかを捉えるには、顕微鏡を利用するのが直接的であると考えた。 装置作製と並行して、サンプルの準備を行うことが当初計画に含まれていた。このことについて、検討を行った結果、当初、予定していた蒸着マスクを利用したマイクロ共振器は、作製の優先順位を落とすこととした。計画通りに共振器のサンプルを作製したが、実験者により構造のゆらぎが大きいため、他の安定した方法を主案とするのが得策であろうとの結論に至った。今後は、MEMSを利用してマイクロ共振器を作製する予定である。発光スペクトルの測定、自然放射光の増幅の閾値を取得することも当初計画に盛り込まれていたが、これらを計測できることを確認している状況であるため、目標は達成出来ている。これらの実験の期間は、それぞれ、2021.10、2020.07となっており、今後作製するサンプルを利用して測定を行うことで、十分、計画どおりに実験を進めることができる。 論文・学会発表がないが、これは、上記の通り、初年度、装置作製に比重を置いていたためである。
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今後の研究の推進方策 |
MEMSを利用してサンプルを作製する。作製する形状は、当初予定のままである。MEMSを利用するために、兵庫県立大学MEMSセンターを利用することができる。サンプル作成に必要なCADのソフトウェアを購入したことにより、現状において、マイクロ共振器を作製する状況は整っている。 上記の方法で出したデータは、論文化する前に、特許化することとした。このため、論文化が遅くなるが、上記のマイクロ共振器以外にも、並行して行う実験はある。たとえば、上記と同様の共振器でありながら、プラズモンではなく光を閉じ込める共振器の作製である。光閉じ込めによる発光スペクトルの先鋭化現象の方が観測しやすく、挑戦性の高いプラズモンの閉じ込めにかかる実験の比較対象とすることができる。そこで、光閉じ込めを狙ったマイクロ共振器も作製し、得られたデータを先行して公開することを目指す。 光学シミュレーションについて、2019年度はMathematica (登録) を利用したが3次元の光学シミュレーションを当該プラットフォームで行うのは困難である。Mathematica (登録) は、シミュレーションの中身がブラックボックスにならないようにするために有用なものであるが、実際に、主として用いるソフトウェアは市販のものとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題に関係する他の予算を獲得できたためである。異なる課題であるが、研究の推進に用いる装置は同じであるため、装置作製費用を分散して装置の作製を行うことができた。備品費として計上していた金額が、それ以外の費目と比べて高額であるため、主な理由は上記の通りである。変更後の金額は、本研究課題の推進に利用する。具体的には、MEMS利用にかかる消耗品と装置利用費、国内学会または国際学会の参加に用いることを予定している。
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