研究課題/領域番号 |
19K05635
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研究機関 | 日本工業大学 |
研究代表者 |
大澤 正久 日本工業大学, 基幹工学部, 教授 (80280717)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 金一価錯体 / 二核錯体 / リン光 / 遅延蛍光 |
研究実績の概要 |
実験実施計画に基づき、配位子としてジホスフィン配位子、補助配位子(アニオン)として臭化物イオンを有した単分子で白色光を示す金(I)二核錯体の光物性の測定を行った。 1 発光スペクトルと発光寿命の温度依存性の測定 (1) ブロードなスペクトルをデュアル発光として解析すると、長波側のスペクトルは温度が低くなるにつれて長波化するのに対し、短波側のスペクトルはほとんどシフトしないことが判明した。 (2) 発光寿命の温度依存性の測定中、YAGレーザーが故障したため測定を中止しているが、途中までの測定データ及び(1)の測定結果から考えると短波側のスペクトルはリン光と結論される。今後光学系のシステムを整え、より精度を上げた測定を行っていく計画である。 YAGレーザー故障のため、次年度の合成計画を前倒した。配位子をより“嵩高く”し、種々のアニオン(塩化物、臭化物、ヨウ化物イオン)と組み合わせた材料を合成した。その結果以下の成果を得た。 2 嵩高い配位子とアニオンのバリエーション (1) 嵩高い配位子の導入で量子収率は大きく上昇した。特にヨウ化物との組み合わせで、ほぼ100%の量子効率を示す金(I)二核錯体の合成に成功した。 (2) アニオンをCl-, Br-, I- と変化させると量子効率が大きくなることから、この発光もリン光と予想される。 (3)ヨウ化物イオンを有した錯体には、オレンジ色発光と緑色発光を示す2つの結晶(多形)があることが判明した。また2つの多形とも、ほぼ100%の量子効率を示すことが明らかとなり、従来の発光効率を超える材料の合成に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
YAGレーザーが故障し、物性測定のための光学系のセットアップが止まっているため。そのため本年度の目標を達成することが出来なかった。研究実施計画の次年度に示した合成計画を前倒しして行うことで研究実績の概要で述べた成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
上記のようにレーザーの故障で計画に遅れが生じているが、合成計画は順調で、従来の発光効率を超える材料の合成にも成功している。故障の問題を解決して物性測定へと展開して行く計画である。研究計画全体(三年間)については目標を達成できると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年11月にYAGレーザーが故障したため、分光器用光学部品の発注を見合わせたため次年度使用額が発生した。故障が直り次第、当初の計画に沿って使用する計画である。
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