研究課題/領域番号 |
19K05636
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
郡司 天博 東京理科大学, 理工学部先端化学科, 教授 (20256663)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 有機-無機ハイブリッド / かご型シルセスキオキサン / チタンホスホネートクラスター |
研究実績の概要 |
かご型シルセスキオキサンの重合では,反応点の数や位置の制御が難しく,ランダムな重合が進むと考えられるので,テンプレートを共存したり,あらかじめ官能基を不活性化することにより重合反応を規制して,その精密重合が達成される。また,かご型シルセスキオキサンやチタンホスホネートクラスターの最高被占軌道や最低空軌道はかご型構造の内側に広がることが分子軌道計算により明らかになっており,かご型構造の骨格をなすケイ素やチタン,リンに適当な官能基を導入してかご型構造の内側の軌道と相互作用できれば,かご型構造を形成する特定の位置にある原子のみを活性化した反応が可能になると期待される。本研究は,かご型構造を有する化合物の特性や物性を明らかにし,その高分子化により多孔性材料としての特性を評価すること,また,かご型構造に置換した官能基によりかご型の骨格構造を形成する原子の特性を制御することを目的として行った。 まず,かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋する反応では,ジメチルシロキシ基を有するかご型シルセスキオキサンとアルキンジオールの反応を検討し,脱水素を伴って重合が進行すること,また,重合体が生成することを見出した。この重合体を適当な有機溶媒に溶解してから型枠に流し込んで加熱することにより,無色透明な自己支持膜を生成することに成功した。 一方,チタンホスホネートクラスターでは,溶媒を変えて加水分解重縮合することによりチタナホスホネートの重合体が生成することを見出した。このとき,加水分解に用いる溶媒の種類や特性に応じて生成物の性状が変化することを見出した。また,溶媒の特性に応じて生成物の比表面積や細孔径分布が変化することがわかった。このように,加水分解時の溶媒を選択するという比較的簡便な方法により重合体の性状を制御できることを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するにあたり以下に示す①~⑥の事項を挙げている:①かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋する反応の開発。②かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の合成。③かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の物性評価。④チタンホスホネートクラスターを剛直な骨格を有するジオールで架橋する反応の開発。⑤チタンホスホネートクラスターを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の合成。⑥チタンホスホネートクラスターを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の物性評価。これらはケイ素系材料に関する基礎(①)と応用(②,③),チタンホスホネート材料の基礎(④)と応 用(⑤,⑥)と分類でき,初年度では①と④を達成した。2年目では,②及び⑤まで計画が進行しており,3年目で当初の目的を達成する見込みを得ることができた。 また,チタンホスホネート材料から派生して,その部分構造を生かしたコーティング材料については,二酸化チタンナノ粒子を担持した光触媒機能を有する柔軟な自立膜について実用に供せる耐久性を有する材料を提案することができた。 これらの理由により,おおむね順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は以下に示す①~⑥の事項を順次推進することにより達成される:①かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋する反応の開発。②かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の合成。③かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の物性評価。④チタンホスホネートクラスターを剛直な骨格を有するジオールで架橋する反応の開発。⑤チタンホスホネートクラスターを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の合成。⑥チタンホスホネートクラスターを剛直な骨格を有するジオールで架橋した有機-無機ハイブリッド材料の物性評価。 2年めは,基礎的な分野にあたる①と④を初年度に達成したことを受けて,順次,応用的な分野にあたる②および⑤へと力点を移動して研究を行った。3年目は,さらに応用を進めて③および⑥の達成を目指す。 まず,かご型シルセスキオキサンを架橋した高分子材料の構造解析を進め,続いてその高分子材料を用いた多孔性材料の物性評価を目標とする。多孔性材料として,窒素などの吸脱着を利用して表面積や細孔径分布を測定する。 次に,チタンホスホネートクラスターを架橋した高分子材料は,溶媒により細孔径やその分布を制御できる可能性を見出したので,これらの再現性を取るとともに多孔性材料として,窒素などの吸脱着を利用して表面積や細孔径分布を測定する。 また,チタンホスホネート材料から派生して展開できた,二酸化チタンナノ粒子を担持した光触媒機能を有する柔軟な自立膜についても,光触媒としての感度向上や稼働する波長域の拡大などを検討し,実用性を向上した新規材料の開発を進める。
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