研究実績の概要 |
かご型シルセスキオキサンの重合では,反応点の数や位置の制御が難しく,ランダムな重合が進むと考えられるので,テンプレートを共存したり,あらかじめ官能基を不活性化することにより重合反応を規制して,その精密重合が達成される。また,かご型シルセスキオキサンやチタンホスホネートクラスターの最高被占軌道や最低空軌道はかご型構造の内側に広がることが分子軌道計算により明らかになっており,かご型構造の骨格をなすケイ素やチタン,リンに適当な官能基を導入してかご型構造の内側の軌道と相互作用できれば,かご型構造を形成する特定の位置にある原子のみを活性化した反応が可能になると期待される。本研究は,かご型構造を有する化合物の特性や物性を明らかにし,その高分子化により多孔性材料としての特性を評価すること,また,かご型構造に置換した官能基によりかご型の骨格構造を形成する原子の特性を制御することを目的として行った。 かご型シルセスキオキサンを剛直な骨格を有するジオールで架橋する反応では,ジメチルシロキシ基を有するかご型シルセスキオキサンと2-ブチン-1,4-ジオールの反応を検討し,脱水素を伴って重合が進行すること,また,重合体が生成することを見出した。この重合体を適当な有機溶媒に溶解してから型枠に流し込んで加熱することにより,無色透明な自己支持膜を生成することに成功した。 一方,チタンホスホネートクラスターでは,溶媒を変えて加水分解重縮合することによりチタナホスホネートの重合体が生成することを見出した。アセトン中ではアセトンが加水分解により脱離したアセトンが縮合した生成物がみられたことから,チタンホスホネートクラスターがルイス酸触媒として有機合成に利用できることを見出した。また,加水分解生成物も光触媒性能を有することを見出した。
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