研究課題/領域番号 |
19K05640
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
高井 淳朗 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, 主任研究員 (90746728)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | クリック反応 / π電子材料 / 分子集積体 / 自己組織化単分子膜 / 有機薄膜デバイス |
研究実績の概要 |
π共役分子は、有機薄膜デバイスの主役級の材料であるが、所望の光学および電子物性を引き出すためには、合成上の煩雑さや薄膜上での集積構造制御における困難が伴う。本研究では、研究代表者が近年見出した電子受容性π共役分子とアミンの無触媒クリック反応を基軸として、新奇π電子材料の物性探索と薄膜上での集積構造の自在制御に取り組んでいる。本年は、以下に示す2点に注力した。
(1) 本無触媒クリック反応の適用可能範囲の理解と拡張を目的として、エチニル基を直結した様々な電子受容性π共役分子を合成した。得られた電子受容性π共役分子とアミンの無触媒クリック反応について、各々の反応速度とπ共役分子の電子状態(LUMOレベルやNMRのケミカルシフトなど)の相関を系統的に明らかにした。反応の速度解析データに基づいて条件を最適化すれば、非対称性π共役分子を選択的に合成することもでき、(ブレンステッド・ルイス)酸塩基応答性の近赤外発光などの機能を有することを見出した(Asian J. Org. Chem. 2021)。また、ナフタレンジイミドやペリレンジイミドなどの芳香族ジイミドに直結したビニル基がアミンと無触媒かつ定量的に反応することを論文発表した(Chem. - Eur. J. 2021; Hot Paperに選出)。
(2) 新たな有機-無機ハイブリッドの創成と機能探索を目的として、無機材料表面で本無触媒クリック反応を行ったところ、従来の手法よりも高密度で電子受容性π共役分子(ナフタレンジイミド)をSi/SiO2基板上に修飾できることがわかった。また、本手法は様々な無機材料の表面修飾に利用でき、例えばナフタレンジイミドを修飾したシリカ粒子が、π共役分子のカラム分離等に利用できることを示した(Chem. - Eur. J. 2020)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、研究代表者が近年見出した電子受容性π共役分子とアミンの無触媒クリック反応に基づき、期間内に以下の3点を達成すること目的としている:① 所望の光学および電子物性を有する新たなπ電子材料の開拓、② 自己組織化単分子膜上でのπ共役分子の配向を制御した有機薄膜材料の創成、③ それらの光学・電子デバイス評価。2年目までに①から③の一部を達成し、3報の主要論文を発表した。また、研究開始当初は予期していなかった新しい展開も広がりつつある。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度においては、無触媒クリック反応により得られる分子集積薄膜材料のデバイス性能の評価や集積構造の解明に取り組む。
また、量子化学計算や反応速度解析により、本クリック反応が一般的な素反応過程とは異なる興味深い反応メカニズムで進行することがわかってきた。追加で温度依存性分光分析等を行い、詳細な反応メカニズムについて論文発表を目指す。
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