研究課題/領域番号 |
19K05644
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
中島 光一 茨城大学, 理工学研究科(工学野), 准教授 (70420411)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペロブスカイト型酸化物 / チタン酸ストロンチウム / ナノクリスタル / ソルボサーマル法 |
研究実績の概要 |
本研究は、水素エネルギー社会の実現に向けた人工光合成に関する研究である。研究目的は、石油エネルギー(化石燃料)から脱却して、水素エネルギー社会を実現することである。現在用いられている水素は、製造所や化学工場の副産物などが用いられているが、温室効果ガス(二酸化炭素)が発生するなどの問題点がある。一方、本研究では水を分解し、水素と酸素を生成させる。このときに必要な要素は、太陽、水、光触媒粒子の3つになり、太陽と水は普遍的なものになるので、研究対象は水分解光触媒粒子で、高効率化に向けた材料設計になる。この水分解光触媒による水素生成は、温室効果ガス(二酸化炭素)を排出しないクリーンエネルギーの創出につながり、日本のエネルギー需要を考えた場合、極めて波及効果の高い研究になる。そこで本研究では、高効率水分解光触媒粒子を創製するために、SrTiO3ナノクリスタルをソルボサーマル合成し、回折測定や電子顕微鏡を用いて微構造解析を行った。
本研究で合成した試料について、回折測定によりペロブスカイト構造を有するSrTiO3であることを確認した。その後、球面収差補正が備わった走査透過型電子顕微鏡を用いてSrTiO3を観察したところ、結晶面が露出したSrTiO3ナノクリスタルであることがわかった。立方体状の形状をしていたが、粒子の角の結晶面が露出していた。水分解光触媒の性能に直結する粒子表面の原子配列を調べたところ、チタンカラムによる表面再構成が生じていることがわかった。今後、このチタンカラムがどのように水分解光触媒活性に関連しているか検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目は、主にソルボサーマル法を用いたSrTiO3ナノキューブの合成が研究目的であった。粒径が50nm以下で結晶面(ファセット)が露出したキューブ状のSrTiO3を合成することができた。2年目は水分解光触媒の性能に直結する粒子表面の原子配列を明らかにすることができた。そのため、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、粒径が揃ったSrTiO3ナノキューブの合成である。そのために、核生成と結晶成長を制御してSrTiO3ナノキュブ合成に取り組む。そして、引き続き、回折測定や微構造解析を行い、水分解光触媒の生成機構を明らかにする。さらに、水分解光触媒評価を行い、高効率に水素が生成するか確かめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、旅費を最小限に抑えたため、29,612円の次年度使用額が生じた。次年度の物品の購入費や機器分析の利用料金に使用する計画である。
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