研究課題
本研究ではガラス・アモルファスといった非晶質材料を対象とし、中性子および放射光X線といった量子ビーム実験データを利用したデータ駆動型モデリングによって非晶質の3次元構造モデルを構築し、さらに先端数理学に基づいたトポロジカル解析を導入することより、非晶質材料に潜在する未知の秩序を抽出することを目的としている。今年度は、SiO2ガラスやCCl4液体のような典型的かつ単純な組成の非晶質材料に対して、回折データに現れる特徴的なピークの起源を考察し、二体相関に潜んだトポロジーを抽出することを試みた。回折ピークの起源については、非晶質材料の回折データの横軸を散乱ベクトルQに対して各非晶質の実空間関数の最近接距離dを乗じて規格化し、横軸Qdが小さい領域に現れるQ1、Q2、Q3の3つのピークを原子のパッキングと配位数、化学結合の観点から議論した。トポロジーの抽出に関しては、非晶質材料の3次元構造モデルに対してパーシステントホモロジー解析(PH解析)を適用し、解析結果として得られる2次元の散布図であるパーシステント図(PD)がネットワーク形成物質とそれ以外の物質で大きく異なることを見出し、さらに、シリカガラスのPDにおいてはガラスよりも高密度の結晶相におけるホモロジーが存在していることを明らかにした。一方で、異なった2種類のアルカリ酸化物を添加したシリケートガラスについて、中性子および放射光X線回折、そしてNMRによる実験データをすべて忠実に再現する構造モデルを逆モンテカルロ法と分子動力学計算を複合化したシミュレーションによって構築し、PH解析とリング解析を実施することで、2種類のアルカリイオンがガラス中で強く相関を持ち、その周囲に混合アルカリ効果の起源となるボトルネック構造が形成されていることを明らかにした。上記の2件の研究成果についてはそれぞれ原著論文としてまとめられた。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度には典型的な非晶質材料に関する解析を進展させる予定であったが、より発展的な系であるアルカリシリケートガラスについても研究を実施することができた。本件に係る査読付原著論文を2件発表、国内外で学会発表を6件実施しており、研究は当初の計画以上に進展していると考えている。
昨年度は主にシリカをベースとした研究を進めてきたが、本年度はシリカ系と並んで重要なガラス形成物質であるP2O5をベースとしたリン酸塩ガラスの研究にも取り組む予定である。同時に、シリケートガラスにおいても昨年度までとは別のガラス系について研究を行い、体系的な構造研究を推進していきたいと考えている。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)
Journal of the Ceramic Society of Japan
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http://doi.org/10.2109/jcersj2.19143
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https://doi.org/10.1038/s41427-019-0180-4