研究課題/領域番号 |
19K05652
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
村井 啓一郎 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (60335784)
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研究分担者 |
森賀 俊広 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (90239640)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 熱膨張 / 熱収縮 / 熱膨張制御 / 固相反応法 / 高温X線回折法 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,室温から 500℃ までの広い温度領域において負の熱膨張係数を有するリン酸タングステン酸ジルコニウム(Zr2WP2O12)を用いて,物質の熱収縮メカニズムを構造化学的観点から明らかにすることである。 具体的には,温度上昇(500℃ まで)に伴う原子の位置変位・熱振動の振幅やその異方性の変化を追跡した。本年度は第 1 段階として,その場観察高温 X 線回折法(in situ HT-XRD)を用いて,室温から 500℃ まで 10℃ ごとに測定し,結晶構造解析を行った。この解析により格子定数変化を追跡し,体積変化率(熱膨張係数)を見積もることができた。また,リートベルト解析により,高温での結晶構造精密化を行い,原子位置・熱振動パラメータを求めることを試みた。局所的な Zr-O,W-O 結合間の原子間距離および熱振動パラメータを求め,熱振動の異方性を定量化することを試みた。さらに熱振動パラメータの温度依存性と格子体積変化(特に稜共有した酸化物イオンが熱振動する空隙体積の変化)との相関を定量化することで,稜共有酸化物イオンの熱振動振幅およびその異方性が負の熱膨張(格子収縮)に及ぼす影響を精査した。 つづいて,Zr サイトにイオンサイズの小さいTiイオンをドープすることで,構造中の負の熱膨張を誘発する空隙体積そのものを減少させ,熱収縮を制御することを試みた 。Zr4+および Ti4+イオンのイオン半径はそれぞれ,0.72A,0.61A であり,ベガード則に従い,置換により格子体積を減少させることは可能だが,どの程度格子が縮小し,その結果どの程度熱収縮が抑制されるかをX線回折法による構造解析で明らかにすることを試みた。現在その測定データについては鋭意解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初申請段階で予定していた計画をおおむね達成できている。具体的には,その場観察高温X線回折法(in situ HT-XRD)を用いて,室温から500℃まで10℃ごとに測定し,結晶構造解析を行い,格子定数変化を追跡し,体積変化率(熱膨張係数)を見積もった。
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今後の研究の推進方策 |
上記の通り,現在のところ計画通りに研究は遂行できているため,今後も当初の予定に沿って研究を進めていく。リートベルト解析には放射光X線を用いた回折測定のデータを用い,高温での結晶構造精密化を行い,原子位置・熱振動パラメータを求める。またEXAFS法によるZrおよびWのX線吸収スペクトルを測定し,局所的なZr-O,W-O結合間の原子間距離および相対熱振動パラメータを求め,XRDから得られた熱振動パラメータと併用することで熱振動の異方性を定量化する。熱振動パラメータの温度依存性と格子体積変化(特に稜共有した酸化物イオンが熱振動する空隙体積の変化)との相関を定量化することで,稜共有酸化物イオンの熱振動振幅およびその異方性が負の熱膨張(格子収縮)に及ぼす影響を精査する。具体的にどの程度の空隙体積をどの程度の熱振動振幅が占有して,どれだけ格子が熱収縮を引き起こすかが明らかとなれば,第2段階として,陽イオン置換を試みる。すなわち,ZrサイトにTiなどのイオンサイズの小さい陽イオンをドープすることで,構造中の負の熱膨張を誘発する空隙体積そのものを減少させ,熱収縮を制御することを試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
理由:実験時に使用する消耗品の試薬および文具の納品が3月となり、年度内に支払いが完了していないため。 使用計画:上記消耗品の支払いが4月に完了する予定である。
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