研究課題/領域番号 |
19K05654
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
酒井 剛 宮崎大学, 工学部, 教授 (40284567)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 水酸化ニッケル / 正極材料 / 二次電池 |
研究実績の概要 |
ニッケル系二次電池の正極材料として用いられるβ型水酸化ニッケルは、その構造及び特性を異種元素の置換によってある程度制御できることをこれまで明らかにしてきた。特に層状構造を有するβ型水酸化ニッケルのc軸方向への成長を促す条件についていくつかの重要な知見を得ている。本年度は、特に異種元素を置換した材料の開発を試みた。ニッケルサイトに配位数の異なる亜鉛ZnなどのⅡ価の元素を置換すると、選択的にc軸が配向成長したシリンダー型構造の粒子が高確率で得られることを見出した前年度までの研究成果を基に、数種類のⅡ価元素を置換した材料の開発を行った。その結果、シリンダー構造を恒常的に得る条件までは至らなかったが、シリンダー構造成長の鍵と考えられる層状構造の層間の変化について置換元素ごとの重要な知見を得た。 また、異種元素置換した水酸化ニッケルの電子導電性を向上させるため、還元剤を含む溶媒熱処理条件でニッケルの一部を部分還元し、一部を金属化することを試みた。その結果、異種元素置換を行った水酸化ニッケルは、通常の水酸化ニッケルに比べて還元されにくくなり、還元剤としてエタノールを用いた場合には、通常ニッケルに対してモル比で5倍添加すれば水酸化ニッケルの還元が確認される条件でも、異種元素、特に亜鉛Znで置換した試料では、7.5倍量のエタノールが必要であることが明らかになった。すなわち、異種元素置換した水酸化ニッケルは、無置換系よりもβ型構造の安定性が高くなり、還元条件に耐えうる材料となることがわかった。さらに、他の異種元素を置換した場合には、異種元素自身が還元析出するケースもあり、異種元素置換の効果は単純ではなく、逆に言えば、多様な特性の制御に応用可能であることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の申請書には、「平成32年度以降は継続して材料の合成を行うとともに、高アスペクト比を有する水酸化ニッケルヘキサゴナルシリンダーの調製条件を確立し、充放電特性を主とする電気化学特性を評価する。」と計画を立てた。その計画に従って、令和2年度は、ニッケルサイトに配位数の異なる亜鉛ZnなどのⅡ価の元素を置換すると、選択的にc軸が配向成長したシリンダー型構造の粒子が高確率で得られることを見出した前年度までの研究成果を基に、数種類のⅡ価元素を置換した材料の開発を行った。その結果、シリンダー構造を恒常的に得る条件までは至らなかったが、シリンダー構造成長の鍵と考えられる層状構造の層間の変化について置換元素ごとの重要な知見を得た。また、異種元素置換を行った水酸化ニッケルの部分還元金属析出による導電性の向上を試みる過程で、異種元素置換した水酸化ニッケルのベータ型構造が置換していない資料に比べて安定性が向上していることを見出した。さらに、本研究を進める過程で、シリンダー状構造の成長を促す置換元素の他に、これまで全く知られていなかった新たな水酸化ニッケルの構造と考えられるものを見出した。よって、当初予定していた計画で研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は継、本研究課題の最終年度になるため、シリンダー構造成長の鍵と考えられる層状構造の層間の変化について、置換元素ごとの重要な知見を系統的に整理し、層間距離の変化を含む多様な変化を生じさせる置換元素の分類分けを行うとともに、学術的な見地から置換元素の効果をまとめる。また、本研究を進める過程で、シリンダー状構造の成長を促す置換元素の他に、これまで全く知られていなかった新たな水酸化ニッケルの構造と考えられるものを令和2年度に見出しており、この構造の解析を通じて、新たな研究展開を行う。
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