研究課題/領域番号 |
19K05655
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
林 直顕 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (70346047)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | メスバウア効果 |
研究実績の概要 |
高温下での遷移金属酸化物の物性は、周囲の酸素(分)圧に大きく影響を受ける。それは固体中の酸素(欠損)量が周囲の酸素分子との平衡により変化し、遷移金属イオンの価数や配位状態が変化するためである。本研究課題では高温精密制御雰囲気中でのメスバウア効果測定装置の開発に取り組んでいる。2020年度には酸素分圧制御部の製作を行った。イットリア安定化ジルコニア(YSZ)管を用いた酸素センサーをガスラインに組み込み、雰囲気ガスを試料加熱炉へ導いて、安定的に長時間保つことのできる装置を製作した。センサー部を800℃に加熱することで、試料加熱炉導入前後のガスの酸素分圧を電圧信号として出力することができた。酸素-アルゴンガス混合領域(PO2=1~10-4atm)では、安定的な酸素分圧制御が可能となった。一方、低酸素分圧領域(PO2=10-4~10-20atm)の雰囲気を作り出すために、アルゴンガス中から微量酸素分子を除くことのできるYSZ管を用いた酸素ポンプを試作しガスラインへ組み込んだ。しかしながら、試料加熱炉から排出されたガスの酸素分圧が安定しないことから、接続部での微小リークの存在や酸素ポンプの動作と酸素センサーの応答性の遅さが原因と考えられ、装置・部品やガス流量の最適化に改善の余地が認められた。また、試料加熱炉は約850℃以上で輻射熱による(メスバウア効果のためのガンマ線を通過させる)測定窓への熱負荷が顕著となり、電気炉材の断熱を高める素材や構造についても改善の必要性が明らかとなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
メスバウア分光測定場所の整備の遅れと、それに伴い装置開発に遅れを生じたため。
|
今後の研究の推進方策 |
試料加熱炉と、それに接続する酸素分圧安定制御機器の改良を進める。また、測定効率を上げるために57Feを富加した酸素欠損組成SrFeO3-δやBaFeO3-δ等のFe4+を含む酸化物の合成を進め、実際に高温・雰囲気制御下でのメスバウア分光測定を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画に対して、施設整備に大幅に遅れが生じたため。今年度末に測定機材の移転が完了し、順次装置の立ち上げを進めている。必要な機材やガンマ線源の購入を計画している。
|