研究課題/領域番号 |
19K05656
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
藤田 渉 成蹊大学, 理工学部, 教授 (50292719)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 銅水酸化物 / 二次元三角格子 / 結晶育成 / 電圧印加効果 |
研究実績の概要 |
該当年度は、塩基性ギ酸銅および3種類の銅ハロゲン化物における磁気的性質の電場印加効果を検討した。これらのサンプルはいずれも層状構造を有する二次元磁性体であり、塩基性ギ酸銅は 5.4 Kでメタ磁性転移、銅ハロゲン化物は面内強磁性で、9 K程度で磁気転移を示す。 塩基性ギ酸銅は加水分解法(ギ酸銅水溶液の加温放置)で作成した。2ヶ月程度の結晶育成を経て、2 mm × 0.6 mm × 0.3 mm程度のサイズを得ることに成功した。銅ハロゲン化物は水溶液からの蒸発法により、数日間で4 mm × 3 mm × 0.5 mm程度のサイズの結晶を用意することができた。まず、これらの結晶を用いて、電圧を印加せずに磁気測定を行い、磁性評価が可能であることを確認した。 それぞれの結晶には一番大きな面(層状)に端子を付けた。通常の磁気測定では、試料を金属製ロッドの先端にとり付けるため、金属ロッドの中に電圧印加用の配線を通すことで、磁気測定装置の外にある電源とサンプルルーム内の試料とをつなげることが可能であった。サンプルが破損した際、サンプルルーム内を汚染しないよう、サンプルをゼラチンカプセル内に入れた。電源として、今回は日置電機社製絶縁抵抗計(IR4051)を使用した。この装置は小型であるが、1000 Vの電圧を10時間以上印加することが可能であった。結晶と電源との間の導通を確認したのち、電圧を印加した。 これらの試料は500 V程度の電圧で絶縁破壊を起こす恐れが認められたため、250 Vの印加で磁気測定を行った。結果はいずれの試料も電圧印加前後で、磁気的挙動は変わらなかった。配線、端子付け、もしくは電源を再度検証する必要がある。 今回は電圧印加による磁気変調を発見できなかったが、今後も、別の試料を用いて慎重に電圧印加効果の検討の継続をしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
該当年度はこれまでに実施したことのない、磁性物質への電圧印加による磁気変調効果の観測を行った。まず、結晶試料として大きな単結晶を育成することを目指したが、数種類の結晶しか調製できなかった。そのため、その後の構造解析、磁気測定、および電圧印加効果を系統的に実施できなかった。現在、いくつかの試料について、主に酒石酸銅の結晶育成に成功している。次年度以降に電圧印加効果を検討したい。
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今後の研究の推進方策 |
銅水酸化物および配位高分子錯体の単結晶の育成をできるかぎり行い、電圧印加効果を実施できるサイズを手に入れ次第、実験を実施したい。また、銅水酸化物の新規誘導体の合成と物性探索を計画通り実施する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当予算は単結晶X線構造解析装置の修理のために使用する予定であった。主に2箇所の修理を実施する予定であったが、該当年度は1箇所のみの修理を行ったため、余った予算を次年度に使用することとした。次年度以降、残りの箇所の修理が必ず必要となる。
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