研究実績の概要 |
本研究では、PtCo, PtFe, PtNi金属間化合物を用いて、これらのPtXからX元素を電気化学的に溶出させ、様々なPtとXの元素比率のナノ粒子表面におけるORR活性を検討し、粒子表面のPtのd-バンドセンターとの関係性を検討した。Ptのd-バンドセンターとORR活性は、これまで提唱されているvolcano plotを示すことが確認できた。また、これらの山の頂点は-3.7 eV付近に位置し、頂点の活性は1.0-1.5 mAcm-2とORR活性に大きな違いが見られた。この結果から、Ptのd-バンドセンターの位置がORR活性を決定する因子であり、volcano plotの頂点に触媒表面のd-バンドセンターの位置を調節することにより、それぞれの触媒におけるORRの最大活性が得られることが明らかになった。しかし、PtCo, PtFe, PtNi金属間化合物を用いて作成したvolcano plotは山の頂点において一致しているが、それ以外の部分では位置せず、つまり、同じd-バンドセンターの値でも違ったORR活性が得られた。この原因は現在のところ不明であるが、近年、ORR活性を解釈するときのd-バンドセンター理論に”Site-Blocking Effect”などの新しい考えを付け加えることが必要であることが議論されてきている。本研究におけるPtCo, PtFe, PtNi金属間化合物のサンプル間で頂点以外の点が一致しない原因は、PtXからX元素が段階的に溶出するときに形成する様々な表面構造が酸素分子、反応中間体などの吸着において、この”Site-Blocking Effect”が関連しているためなのではないかと考えている。今後はこの点を計算科学と実験により明らかにしていく。
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今後の研究の推進方策 |
我々のこれまでの研究において、カップスタックカーボンナノチューブ(CSCNT)触媒担持体の表面にTiO2を析出させ、さらにTiO2上にPtを析出させたPt/TiO2/CSCNTは従来のPt/CBよりも高いORR活性を有することを明らかにしている。また、白金鉛金属間化合物ナノ粒子PtPb/TiO2/CSCNT触媒では、電位を掃引することでPbが溶出し、それに伴ってORR触媒活性が変化し、ORR活性とPtのd-バンドセンターとの間にVolcano型の相関関係があることが確認されている。これらは、Pt-TiO2およびPt-Pb間における電子的相互作用によりPtの電子状態が変わり、その結果、ORR活性が変化していることを示しおり、これまでも同様の報告がある。今後の研究では、Ptのd-バンドセンターを任意に制御することを目的として、種々の元素(M1, M2)を含む複合金属酸化物(M1M2Ox)上にPtを担持させたPt/M1M2Ox/CSCNT触媒を合成し、そのORR触媒能を評価し、さらに、XPS, EELSによるPt-M間における電子的相互作用の変化を測定し、Ptのd-バンドセンターとORR触媒活性との相関性を明らかにすることを目的とする。
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